池宮正信さん 被爆ピアノでコンサート
【池宮正信さん
新春ピアノコンサート】
1月29日(金)14時~16時
自由学園明日館講堂
池宮さんの帰国コンサートに行ってきました。今年は、東京・西池袋の明日館講堂という珍しい場所で。昭和2年建造の重要文化財だそうです。また、普通のピアノでなく「被爆ピアノ」を使ってのコンサートとのこと。一体、どんな趣向なのか……。
開演20分前には到着したのに、もう長椅子の座席はほぼ満席でした。切符も売りきれているというし。ポツポツと空いている席を探して着席。
間もなく主催者の挨拶が始まりました。被爆ピアノの説明。調律師さんの紹介……。今回のコンサートが、広島で被爆して現存するピアノを用いた特別なものであることがわかりました。被爆ピアノは現在全国に6台。そのうち4台を、広島の調律師・矢川光則さんが所有し、音楽を通じて平和を訴えるため各地を行脚しているとのことでした。4台のうち3台はヤマハですが、1台はドイツ製の「HORUGEL」。この日使われたのが、このドイツ製でした。
このピアノは、爆心地から2.6キロのお宅にありましたが、爆風で破壊された家屋の中で奇跡的に生き残ったのだそうです。被爆後もずっとそのお宅で大切にされてきたのち、昨年(2009)矢川さんが引き取ることになったとのお話。「和子のピアノ」と呼ばれているそうです。ピアノの両側には、、このピアノが背負う祈りや願いを象徴するかのように、びっしりと折り鶴がかけられていました。
ご挨拶のあとは、いつもの池宮さんのペース。クラシックはショパンやリスト、休憩をはさんでラグタイム。
間に映像が入りました。講堂の舞台から真っ白な巨大スクリーンが降りてきます(古い建物ながら、新しい設備はしっかりある!)。池宮さんのアメリカでの自宅農園や地域での活動の様子が映し出され、そのバックに池宮さんが弾く「亡き王女のためのパバーヌ」や「乙女の祈り」が流れます……。完全無農薬の菜園といっても相当な規模のようで、生半可な家庭菜園ではありません。さまざまな野菜が作られ、収穫物はそのまま、あるいはピクルスやジャムになって貯蔵庫に保管されています。自宅脇には薪が積まれ、水もタンクに溜め、徹底的なエコと自給自足を目指しているとのこと。地域の方々との交流も盛んで、ホスピスで演奏や話し相手をしたり、地域の若者たちを受け入れたりと、すっかり「地元の人」となっている様子が映し出されていました。晴耕雨読ならず、晴耕雨弾?でしょうか。池宮さんご夫妻の理想的な暮らしぶりが伺われました。
ラグタイム曲は、ゴッドシャルク「Paskinade」、ジョプリン「The Entertainer」、ユービー・ブレイク「Chavy Chase」「Charleston Rag」、アダリン・シェパード「Pickels and Peppers」、ジュリア・L.ニーベルガル「Red Rambler Rag」、ボルコム「The Last Rag」。締めはガーシュインの「パリのアメリカ人」でした。
終わったあと、数人が舞台の上でピアノを見たり、音を出したりしていました。え? 弾いていいの? 聞いたらOKだと。そこで何も考えず弾いてしまったのが「The Entertainer」でした。ああ~、恥ずかしい。池宮さん、ごめんさ~い! ピアノは鍵盤のタッチが深く、やや響き気味のところが古さを感じさせますが、しっかりした音が出るよいピアノでした。私の自宅ピアノは間もなく30年になりますが、このピアノほどではないと思いました。とはいえ、古いアップライトです。このピアノで、ショパンやリストのあの華麗な調べが、そしてユービーブレイクのあの力強いラグが演奏されてたなんて。やはり池宮さん、すごい。当たり前だけれど。
毎回サプライズつきの池宮さんコンサート。去年は、レ・フレールと一緒のツアーの一環で、満員のオーチャードホールだったし。またの機会が楽しみです。
右の写真は、池宮さんが昨年リリースしたCD「Joy of Ragtime」(喜びのラグタイム)。ジャケットには、メイン州での自宅農園の様子がパッチワークのようにレイアウトされています。
14曲のうちレアなのは、ジョセフ・ラムが夫人のアメリア・ラムとともに作曲したという「Chimes of Dixie」(池宮さんの編曲)。ゴッドシャルクが2曲。エルネスト・ナザレが2曲あります。くわしくは池宮さんの下記サイトで。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~ikemiya/discography.html
最近のコメント