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私とラグタイムとの出会い

ラグタイムというのは、昔のアメリカ映画の場末の酒場のピアノ弾きの曲、というイメージが私にはあります。それは遠い記憶のかなたにあるだけですが、ラグタイムを聞くと郷愁のようななつかしさを感じるのです。

大人になって、10年以上のブランクのあとピアノを弾きたくなり、中級レベルのピアノ曲集を買ったのですが、その本の広告にあったのが、ドレミ楽譜出版社の『スコット・ジョプリン ピアノ名曲集』でした。当時はスコット・ジョプリンの名も知らなかったのですが、宣伝文句にあった「独特のリズム」と「ラグタイム」という言葉に何かピンとくるものがあり、注文してみました。楽譜が届き、弾いてみてびっくり。まさに自分が好きな音楽でした。なつかしい「場末の酒場のピアノ弾き」の音楽だったのです。ラグタイムのCDを探し始めたのは、その後のことです。

映画「スティング」はそれ以前に何回か見ていましたが、それに使われた音楽ということも楽譜で初めて知りました。The Entertainer から手をつけましたが、すぐ Maple Leaf Rag を弾く面白さに目覚め、弾けないながら弾き始めました(この表現、わかる人ならわかりますよね!)。また、Solace というハバネラのリズムを使った曲(この曲の一部も「スティング」に使われている)の魅力にもとりつかれました。最初は、この3曲をず~っと弾いていました。

ラグタイムをピアノで弾く面白さは何だろうと思います。まず、リズムの魅力です。左手は単純に2拍子を刻むものがほとんどです(左手だけ弾くと、マーチとなんら変わりのないものが多い)。でも音域が離れているので、これがサマになるまで一朝一夕にはいきません。だいたい、まず音がはずれるし、はずれないようになっても重い伴奏になりがちです。不必要な力が腕に入っていると、練習していて腕が痛くなり、ひどいと筋肉を傷めます。傷めないように脱力して弾き、しかもある程度の筋力の支えも必要です。左手が軽やかに歯切れよく出来て、初めて第一関門突破でしょうか。ここに右手のメロディーのシンコペーションが乗る面白さが、ラグタイムの快感だと思います。左手と右手でリズムがずれているから、弾いていて、ある種スポーツをプレイするように面白いのです。

Maple Leaf Rag を楽曲分析するとABACDとなりますが、このBの部分や、Elite Syncopation の最後の部分など、まさにこの快感のクライマックスです。これは合奏でラグタイムをやるのでは得られない、ラグタイムピアノ・ソロの特権かもしれません。これに「はまる」と抜けられません。今練習しているAmerican Beauty Ragは、最初から最後まで、息もつかさずこのズレの感覚が味わえる曲だと思います。

私の郷愁の中にある「場末の酒場のピアノ弾き」が出てくる映画ですが、どんなものだったのか、それが特定の映画なのか複数の映画なのか、まったく記憶にありません。機会を見て、昔のアメリカ映画にあたりながら探してみようと思っていますが、そんなもの、実在しなかったりしてね!?

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コメント

初めて、お邪魔します。

面白い!豊富な情報量、時折混じる自然のお話もいいなー。
なにゆえラゲディアンさんがここまでラグタイムにはまったのかが、知りたく、ここでやっと見つけました。
偶然の出会いだったのですね。

私がピアノの蓋を再び開けたのも、ある無名のピアニストの演奏を聴いたのが、きっかけでした。即、生徒にしてもらい、早九年目。
つたないながらも、今では私にとって、音楽は生きる上で、絶対に欠かせないものとなっています。

あまり弾かれることのない、名曲を捜し出すのも、楽しみの一つです。今度ラグタイムも聴いてみたくなりました。

ところで、以前から気になっていたのですが、
CHOPINのETUDE(OP.25-9)ってラグタイムみたいに聞こえません?
私がよく聴いてるのはポリー二の演奏ですが、氷の入ったグラスの音や椅子を動かす音、人々の談笑、タバコの煙の香りが漂って来る気がしてなりません。
これも、いつの日か弾きたい曲の一つです。

現在は、長生 淳 「燃え上がる丘」とBEETHOVEN SONATA NO.32のARIETTAに取りかかっています。

投稿: juno | 2005/12/07 10時21分

junoさん、お読みいただき、また書き込みもありがとうございます。
そう、ラグタイムとは偶然出会ったのですが、でも考えてみると、そのとき出会わなくても、その後いつか見つけて、やはりはまっていたと感じています。自分の好きなタイプの音楽に、明らかに一定の傾向があるからです。
junoさんも是非、ラグタイムを弾いてみてください。知られていないいい曲も、たくさんあります。著作権切れのものは、アメリカのサイトから無料でダウンロードできます(家のパソコンで開いて、そのままプリンターで楽譜が印刷できるのですよ!)。
ショパンのエチュードop.25-9ですが、楽譜を見たら、ホント、ビックリ、2拍子のラグタイム風のバッキングですね! 明日、譜読みしてみます(CD、見つからず……泣)。

投稿: ラゲディ・アン | 2005/12/08 00時39分

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