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奈良ホテルのスタインウェイ・ピアノ

steinway_narahotel_2 奈良・春日大社の節分万燈籠を見に行ってきました。その際宿泊したのが奈良ホテル。由緒あるホテルですが、そのメイン・メインダイニングに、なんと日本最古のものと言われるスタインウェイのグランドピアノがありました。説明書きには、1922年にドイツで作られ、1924年にやってきた日本で最も古いスタインウェイと書いてあります。
 朝食時は蓋も閉められ、上にはモエ・エ・シャンドンの花柄のマグナムボトルが置かれて、展示品のようになっていましsteinway_narahotel_1 た。塗装はもう相当剥がれています。しかも今の黒いピアノの塗装とは違い、茶色いニスのような仕上げといったらよいでしょうか。ピカピカ光っていなくてマットな表面で、それが古い寺院の柱のように彩色が剥がれて、味わいのある古色を出しているといった感じでした。
 夕食時に行くと、今度は蓋も開いていて、ひょっとして生演奏でもあるかと思いましたが、それはなし。でも中が覗けたので、写真を撮らせてもらいました。
 その結果、疑問も生じました。蓋の中にある文字には、1899年10月3日製造、とあるのです(上の写真)。Steinway&Sons New Yorkという文字もありました。ドイツ製なのかアメリカ製なのかという疑問も……。スタインウェイ一家が息子1人をドイツに残し、ハンブルクからアメリカにやってきて、Steinway&Sonsの社名を名乗るようになったのが1853年。アメリカで製造していても不思議はない年代です。ホテルの説明書きは、もちろん根拠があってのものでしょうから、この文字と説明書きとの矛盾はどうなるのか? これは、問い合わせしかないですね。もっとその場でよく見て調べてくればよかった……。ついでに、ちょっとだけでも弾かせてもらえればよかった……。
 なお、このメインダイニングルームは、明治42年(1909)のホテル創建時そのままだそうで、高い天井の和洋折衷建築。ピアノの後ろは、洋間なのに、なんと金のふすまです。
steinway_narahotel_3 後日談その①(2006年2月17日)
ホテルに問い合わせたところ、なんとこのピアノには自動演奏装置がついていたそうです。自動演奏装置自体は残っていないということですが、たいへん興味深い事実だと思いました。自動演奏ピアノというと、アップライトだけかと思っていたのですが、このようなグランドピアノでも、そういうものがあったのですね。奈良ホテルに納入されたときにも、それがついていて、このレストランで自動演奏されていたのでしょうか? どんな曲が? ますます興味をそそられました。

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ピアノ」カテゴリの記事

コメント

実に興味深いお話ですね。私が思うにはこのピアノはアメリカ製です。大体ピアノに書かれている製造年月日が間違っているというか、偽造されているということは考えがたいことですし、通常ありえません。ほぼ確実にこのピアノは、1899年10月3日にNEW YORKで製造されました。創立者のHENRY ENGELHARD STEINWAYは 既に1871年に亡くなっておりますし、二人の息子、WILLIAMとTHEODOREは、1880年10月1日よりHAMBURGで独立して、ピアノを製造していましたし・・・。ヨーロッパにもこの素晴らしいピアノを普及させようと、ミシン工場の跡地にピアノ製造所を構え、製造も販売もNEW YORKとは全く別でしたから、間違いないと思います。

特にTHEODOREは NEW YORKに馴染めなかったところがあり、1881年3月に奥さんと一緒にNEW YORKを去ってからは、二度とアメリカには戻らなかった・・・というくらいでした。(もしかしてこの子がドイツに1人残された息子???)彼は父親ほどではなかったですが、自分で45の特許を取り、立派に独立して働いておりました。

奈良ホテルのピアノが本当にドイツ製ならば、彼が、嫌いだったNEW YORKの名前が使用されているのが不自然です。HAMBURGのブランドを自分の力で作り上げたのですから、いくら晩年になってからとて、父親が築いた名前を背負いたくはないでしょう。

1899年とは明治32年のことです。そしてこのホテルができたのが明治42年。ピアノが製造されたと思われている年が’22年で、運ばれたであろう年が大正12年。もしかして、当時余り外国語のできなかった日本人達が、人から聞いた話をまた伝えて・・・なんてことをして、明治32年と'22年を間違えたのでは???特に昔は漢字で数字を書いていましたから、棒が何本???なんてしょっちゅう間違えそう!!!三十二???二十二???しかも、運ばれてきた年が大正12年。十二??? いくらなんでもドイツへ渡ったアメリカ製の高価なピアノをわざわざ大変な思いをして奈良まで運んでこないでしょう。しかも船でものすごい歳月を掛けてですよ。

ちなみにこのピアノが本当に1899年に製造されたものならばすごい年ですね。ジョップリンのメープル・リーフ・ラグやユービー・ブレイクのチャールストン・ラグが作られた年、ピアノや譜面が馬鹿売れした時代です。正にラグタイム全盛期のアメリカ製ピアノが日本に上陸したことになります。最初は年間1000台だったスタインウェイ・ピアノ製造量も19世紀後半には倍増した模様。当時のラグタイムの香りがしませんでしたか?


投稿: 裕美・ルミィヤンツェヴァ | 2006/02/17 04時10分

裕美様、考察ありがとうございます。そうなんです。ラグタイム愛好家にとっては、年代的に、いてもたってもいられないくらい興味深いピアノなのです。
その後、ホテルから返事をいただいのですが、「1920年代にドイツで作られたものらしい」ということで、この点は再度確認したいと思います。しかし、その返事で興味深い事実を教えてもらいました。なんと「自動演奏装置」がついたピアノだったらしいというのです。しかも自動演奏装置自体は現在残っていないそうです。
自動演奏装置というと、アップライトピアノしかイメージになかったのですが、このようなグランドピアノで自動演奏装置つきがあったとは、正直驚きました。そういうものの製造の歴史という点からも、手がかりがつかめるかもしれません。
ピアノに書かれた日付についてですが、そのピアノそのものでなく、その会社が設立された年代が書かれているということはあります。昨日ヤマハのグランドを弾いていて気づいたのですが、「YAMAHA 18○○年」と書いてあり、ヤマハピアノの創立年なのだろうと思いました。
いずれにしろ、「1899年10月3日」とは何を意味するのか? もう一枚「New York」と書かれた部分の写真を追加アップしましたが、この年のアメリカ製ということなら、Maple Leaf Ragの発売年で、まさにアメリカのラグタイム時代を象徴するようなピアノということになりますよね。

投稿: ラゲディ・アン | 2006/02/17 08時09分

益々面白くなってきましたね。私はかつて横浜トヨペット(元町、マリンタワー裏)の2Fでよくコンサートやダンス・パーティを開催しておりましたが、そこには自動演奏式のグランド・ピアノが置いてありました。

機種までは覚えておりませんが白色でとてもお洒落でした。館長さんが音楽一家で、わざわざそのようなピアノを好んで置いたようです。

投稿: 裕美・ルミィヤンツェヴァ | 2006/02/17 15時18分

興味深く読まさせて頂きました。
若干、否定的な記事になってしまいましたが、
このピアノの素性について当方Blogにて記事にさせていただきましたので
ご覧いただければ幸いです。

投稿: 新平 | 2008/03/18 09時05分

新平様。初めまして、こんにちは。
当方のブログから引用していただき恐縮です。おかげさまで、この件に関して疑問が解消しました。「1899年10月3日」の日付はパテント取得日で、多くのピアノにこう書かれているということですね。しかも同じ記載のピアノをお持ちとでいらしたとは! まさに知りたいことでした。
ホテルでは、1924年にやってきた日本で最も古いスタインウェイ、と表示しています(2006年現在)が、日本で最古かどうかは、何とも言えないというところでしょうか。
その後、自動演奏のグランドピアノに接する機会を持ちましたが、グランドの自動演奏装置付きというのは、本当に短い期間しか製造されなかったという話も聞きました。
ホテルのほうでも、製造番号やピアノの歴史面からのアプローチも含めて、せっかくなのでもう少し詳しい説明を掲示してほしいところです。あまりメンテナンスもされず、楽器としての利用もないようだったので、惜しい気もしました。
なお、奈良ホテルのピアノが自動演奏装置つきだったとしたら、どんなピアノロールが付属していたのか、今やそちらのほうが興味あります。上記のDuo Artの動画でもノベルティー・ラグ風な演奏がありましたが、クラシック曲に混じって、そのようなラグタイム曲が日本でも演奏されたかどうか、興味が尽きません。
ご教示、ありがとうございました。

投稿: ラゲディ・アン | 2008/03/18 09時56分

奈良ホテルと創立が同じ、奈良女子大学(奈良ホテルの近くです)にもスタンウエイがあります。
http://www.nara-wu.ac.jp/kenkyou/news/photo/piano2.html
刻印も同じ 1899年10月3日がついています。

こちらは 215604 という製造番号らしい刻印がピアノ背面にあります。

で、日本で古いスタンウエイって
http://www.fureai.or.jp/~mkura/kiboo.html/#ピアノ

にありますが、製造番号11013のこれだと思っています。いかがでしょうか?

それとは別に奈良女子大学同窓会はヤマハさんの967番刻印のアップライトも所有していたり、明治期のヤマハオルガンも所有しているようです。
http://www.nara-wu.ac.jp/kenkyou/news/photo/piano1.html

大学ではヤマハさんの明治期のグランドピアノも所有しています。
http://www.nara-wu.ac.jp/kenkyou/liaison/topics/piano.html

毎月1回大学で行われるランチタイムコンサートでは現役で使用されています。

投稿: てるてる坊主 | 2008/05/10 13時33分

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