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CD「Discovery」              ~西部開拓史に思いを馳せるピアノ曲集

Dtr_2  David Thomas Robertsのピアノ・ソロ最新作。2005年4月リリース。
ラテンやジャズ要素も強い「New Orleans Streets」(1988年)、ラグタイムの真骨頂をみせる「15 Ragtime Compositions」(1993)や「American Landscapes」(1995)に比べて、よりクラシック色が強くなっていると感じました。繊細で、ときに幻想的で、ときにノスタルジック。ショパンやドビュッシーを思わせるような色彩。しかしそんな旋律や和声が、やはり「リズム」に支えられているのは、DTRさんならではでしょう。サブタイトルに「Neo-Romantic and New Eclectic Piano Music」とわざわざ掲げています。訳すと「新ロマン主義・新折衷主義ピアノ音楽」。これだけ見ても、クラシックへの傾倒は感じられます。

 アメリカの歴史が、西部開拓の歴史だった時代がありました。開拓は発見でもあり、Discoveryディスカバリーという言葉に、アメリカ人は特別な思いがあるのではないでしょうか。そういえば、日本人宇宙飛行士野口さんが、2005年に搭乗したスペースシャトルの名も、ディスカバリーでした。

 さて、このアルバムもタイトルが「ディスカバリー」。そして全12曲の冒頭の曲が「ディスカバリー」です。何の「発見」なのかは、CDの解説を読めば書いてありますが、今ひとつ、ピンときませんでした。

_p1010015_1  しかし、「Discovery」の楽譜(左)を見て実感がわきました。
 この写真は、アイダホ州にあるBitterroot Mountains (ビタールート山脈)のLolo Trail(ロロ・トレール)。1805年9月16日、国命を受けた西部探検隊のルイスとクラークがこの近くを通ったのだそうです。
 1803年、時の合衆国大統領トマス・ジェファーソンは、未開拓の西部を、太平洋に向かって水源をたどる旅をこの2人に命じました。その名も、「Meriwether Lewis and William Clark's Corps of Discovery 」。ジェファーソンが期待したのは、マンモスや活火山や塩の山の発見だったというから、時代とロマンを感じさせます。

 2人は、数名の同行者とともに、丸太舟と犬をお供に、イリノイ州を基点に、現在の11州に及ぶ地域を3年間に渡って探険し、動植物、文化、地図などを報告書に書き残しました。マンモスは見つからなかったけれど、地誌的にたいへん貴重な第1級資料を残したことになります。

 このルートは、ミズーリ川をたどっていくもので、ロバーツ氏の地元ミズーリ州では、西部探険隊の歴史のなかでも、たいへん関係が深いものでしょう。地図やくわしい内容は、このナショナル・ジオグラフィックのサイトをどうぞ。二人の肖像もあります(最初の画面表示にやや時間がかかるかも)。
http://www.nationalgeographic.com/lewisandclark/

 CDのこの曲も、探険200周年を記念して、ミズーリ州コロンビア在住の個人が委託して作曲されたもの。ロバーツ氏は個人的な委託作曲をずいぶん受注しているようで、このCDの中にも、いくつも含まれています。

 さて、2曲目の「Charbonneau」は、ロバーツ氏の作品ではなくて、仲間の音楽家であるScott Kirbyの作曲です。この曲も、西部探検隊に関連のあるタイトルなのです。
この曲のタイトル自体はノースダコダ州のゴーストタウンの名だそうですが、その町名は、この探検隊の通訳&案内をつとめたネイティブ・アメリカンの女性サカジャウェアの夫シャルボノーにちなんだものです。サカジャウェアは、1804年当時16歳。なんと1歳の乳飲み子を背負って探検隊に同行したというから驚きます。詳しいことはこちらのサイトで。肖像も見られます。
http://www.nps.gov/archive/jeff/LewisClark2/CorpsOfDiscovery/TheOthers/Civilians/Sacagawea.htm
 

 ほとんど歴史解説になってしまいましたが、このCDには、そんな西部開拓時代の「発見」への思いがこめられているはずです。土地や風景に詩的インスピレーションを受けるというDavid Thomas Robertsさんですから、尚更その思いは強いかもしれません。この中では「ディスカバリー」、「マリアナのワルツ」、「山の赤ちゃん」、「シンシア」の楽譜が手に入りました。ちょっと弾いてみたいのが「山の赤ちゃん」ですが、フラットが6個で、初見で適当に、というわけにはいきません……。

 このCDは、残念ながらCDショップには並んでないと思います。
★アメリカから取り寄せは、こちら。ここに解説もあります。http://cdbaby.com/cd/dtroberts

★解説の日本語訳つきはこちら。「Discovery」冒頭など、3曲ほど一部試聴ができます。
http://www.geocities.jp/otarunay/david.html

★また、今月(2006年10月)末から、David Thomas Robertsさん自身のピアノソロによる、初めての来日公演があります。その情報も、こちらです。
「オタルナイレコード」
http://www.geocities.jp/otarunay/david.html

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コメント

 私もこの時代の歴史に興味があります。
 時間ができたらいろいろ調べてみたいです。

投稿: 浜田隆史 | 2006/10/09 11時14分

「Discovery」は、デヴィットさんの曲の中で一番好きで弾いてみたい曲です。まだ手を付けていませんが。

投稿: 草野 | 2006/10/09 14時11分

浜田さん、ぜひ時代背景もお願いします!

草野さん、「Discovery」、いい曲ですよね。一番お好きでしたか。私はいくつもあって、何が一番好きか、ちょっとよくわかりません(混乱中?)。

投稿: ラゲディ・アン | 2006/10/09 20時28分

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