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ラグタイム・リバイバルに貢献の二人

_pc280009 年末に本を整理していたら、"They All Played Ragtime"(Knopf, New York, 1950)のハードカバー本が出てきました。後に改訂されたペーパーバック版に貴重な楽譜がついているため、そちらを再購入。そのため、ハードカバーはほとんど見ることなく積まれていました。

この古本は蔵書印もあり、中には新聞の切抜き記事もはさまれていました。ひとつは1975年10月23日のWall Street Journal。ジョプリンの「Treemonisha」の劇評でした。また、1986年のDenver Postの短い記事も二つ。どちらも音楽関連記事で、以前の所有者もラグタイムやアメリカ音楽に深い興味と愛着をもっていたことが想像されました。

さてこの本の紙のカバーはぼろぼろで、あまりに破れていたので別に保存してありました。それを今回、新聞紙の上に広げてメンディング・テープで補修。透明のビニールにくるんで、なんとか本の表紙につけました。その際気づいたのが、著者の写真。この本の二人の著者の写真とプロフィールが、紙カバーの折り返しの裏についていたのです。

この本の著者のことを"she"で受けて書いている英文をどこかで読んだことがあり、私は二人とも女性なのかと想像していました。ところが、Rudi Bleshのほうは男性。Harriet Janisが女性でした。

Rudi Bleshは、1899年のオクラホマ生まれ。大学卒業後、広告アートの仕事に従事。1925年から44年まではカリフォルニアでインテリアや工業デザインの仕事についていました。そして、長らく温めていたアフロ・アメリカン音楽への興味を開花させ始めたのが40年代。"This is Jazz"(1943),  "Shining Trumpets"(1946)など、ジャズやアフロ・アメリカン音楽についての評論や著書を次々に出すようになり、1950年にHariiet Janisと共著で、ラグタイム史上に残る、この貴重な本を出版したのでした。

一方、Harriet Janisは、ニューヨーク生まれ。コロンビア大卒。現代美術に多大な関心を持ち、1925年から40年まで現代絵画の研究と現代アートの開拓に従事しました。ピカソとの共著、ピカソの「ゲルニカ」の映像台本の執筆をはじめ、現代アートについて多くの執筆があります。その彼女が同時に関心を持っていたのが、アフロ・アメリカン音楽で、Jelly Roll Mortonの12組のアルバムのドキュメンタリー・レコーディングも手がけています(The Saga of MR. Jelly Lord、1947)。

この著者が二人とも、美術関係に関わってきた人たちだったとは、ちょっと意外でした。ラグタイム関係の第1級資料も多く含まれている貴重な本です。また、この本が70年代のラグタイム・リバイバルへ与えた影響は測り知れないのではないかと思います。ジョシュア・リフキンのジョプリン演奏のCDが大ヒットし、それに影響されて映画「スティング」にラグタイム曲が採用され、その影響を多くの人が受けました。先日来日のデヴィッド・トーマス・ロバーツさんもその一人で、70年代のリフキン演奏と映画「スティング」がラグタイムへの興味を深めるきっかけだったと語ってくれました。

著者二人は一体どういう人だろうと思っていたのですが、やっとわかった年末でした。

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コメント

ごぶさたしてます。今回は貴重な情報をありがとうございました。件の書籍はPDFで頂いているのですが、やはり英語とあって読んでいません。いつか翻訳でますかね?出ないでしょうね…。ラグタイム・リバイバルでもあると別ですが、そうすると一過性の流行好き国民の性格上「おざなりの翻訳」が出るでしょうから、どっちもどっちでしょうか?

2007年のご活躍を期待しています!

投稿: 青木 | 2006/12/31 06時31分

私も室町さんからコピーをいただいたきりで、巻末の資料以外はほとんど読んでいません。貴重な初版本ですから、どうぞ大事にして下さい。

投稿: 浜田隆史 | 2006/12/31 12時16分

青木さん、お久しぶりです! 翻訳は期待しないで、自分で読むしかないですよね。今年もどうぞよろしくお願いします。


浜田さん、最初は知らずに一番安いのを注文したら初版本だったのです。市場価値がないんでしょうね。不幸中の幸い、もう大切にするしかありませんね。

この本の第3版は1966年、第4版は1971年に出ていますが、序文によれば、71年の時点でHarriet Janisは故人となっていたようです。66年の時点でかもしれません。というのは、付録の楽譜のMax Morath「The Golden Hours」(1966)には、「To the memory of Harriet Janis」という献辞がついているからです。

Harrietの夫はシャツなどを製造していた裕福な被服業者で、現代アートのよき理解者・購買者でもありました。「Sydney & Harriet Janis Collection」というのは、ピカソやルソーなどをはじめとする現代絵画のコレクションとして有名なようです。

投稿: ラゲディ・アン | 2007/01/01 12時02分

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