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映画「スティング」とジョージ・ロイ・ヒル

昨年9月、「映画スティングに、なぜラグタイムが使われたか?」という記事を書きました。
http://elmtree.air-nifty.com/ragromenade/2006/09/post_cc44.html

その際、監督ジョージ・ロイ・ヒルの息子が、
曲の選択に関わっていたらしいということを知ったものの、
それ以上のことはわかりませんでした。

Sting ところが!
その疑問に答えてくれる文章に出会いました。
先日、
映画「スティング」の楽譜(Hal Leonard Corp)なるものをゲットしたのですが、裏表紙に、監督ジョージ・ロイ・ヒルの回想文があったのです。
http://www.amazon.co.jp/Sting-Marvin-Hamlisch/dp/0881886149/sr=1-4/qid=1170942880/ref=sr_1_4/503-7941449-3019149?ie=UTF8&s=english-books
(上記リンクには1991年出版とありますが、中の楽譜の多くは2004年のcopyrightになっています)


すでにどこかで発表されている文章なのでしょうか?
ジョージ・ロイ・ヒルの自筆サインも印刷されています。
そこには、ジョージ・ロイ・ヒルとラグタイムの出会いが、
ばっちり書かれていました。



まず、1972年の秋の日のエピソード。
ジョージの上の息子は、その当時新しく録音されたジョプリンのピアノ・ラグに熱中していてました。そして、父親(ジョージのこと)ために弾くから聞いてくれと言い張ったことがあったそうです。この「録音」は、1970年11月からリリースされたジョシュア・リフキンのアルバムに違いありません。
そして、その直後、ジョージの13歳になる甥っ子が、家族の集まりでストンプしながらSwipseyを演奏したことがあったそうです。
この二人の少年に「釣られて」(はめられて――hookという単語を使っていますが、この映画のキーワードです)、彼はジョプリンの楽譜をすべて求め、自分の楽しみのために弾くようになったとか。
ラグというとホンキー・トンク調の即興だとしか思っていなかったのに、オリジナルの楽譜を見てその素晴らしさに目覚めたそうです。

(ここで訳注です。

ジョージ・ロイ・ヒルの大学での専攻は音楽でした。
イェール大で、当時ドイツから亡命中のパウル・ヒンデミットについて作曲を学んだとか。道理で。かるく弾けますよね~。
しかもその後、海兵隊のパイロットとして輸送機や戦闘機の操縦もしていたというから、並ではありません!)

さて次なるエピソード。

映画「スティング」の構想が決まったとき、
この映画にジョプリンのラグの素晴らしいユーモアと高尚な精神がぴったりだと思い、
採用を思いついたそうです。
しかも自らピアノを弾いて、映画のラフカットに合わせて会社側に提示したとのこと。
その際、映画でも自分がピアニストとしてピアノを弾くつもりだったのが、
あっさり却下されて、監督に専念することになったとか(どこまでホント?)。

その後、かねてから馴染みだったMarvin Hamlischを音楽監督に決めました。

しかし、打ち合わせをした際、曲の選択では二人の好みが全く一致したとか。
The Entertainer, Gladiolus Rag, Pine Apple Rag, Ragtime Dance、
そしてジョージの最も好きな曲はSolaceだそうです。

この映画で使われるSolaceは、実は原曲の後半部分のみです。
ABACDの構成のうち、CDがあの有名なメロディーですが、
ABもとてもゆったりした魅力的なハバネラです。
上記のサントラ楽譜には後半しか出ていませんが、
オリジナルを弾きたい方は、ぜひスコット・ジョプリンの楽譜集を求めて、
そちらで練習されることをおすすめします!

また、この楽譜ではThe Easy Winnersの調が「A]になっていますが、
オリジナルは「A♭」です。
これはオリジナルのほうがずっと弾きやすくて、
いくらサントラ版とはいえ、なぜ移調していあるのかわかりません。
(ピアノソロ用の楽譜なのに!)
弾きたい方は、この楽譜で「むずかしい」とあきらめず、
ぜひオリジナル楽譜で弾いてください。
ジョプリンの曲の中では「難所」の少ない弾きやすい曲なのです。

なんだか「オリジナル楽譜」がいいとばかり書いてしまいましたが、
上記の楽譜集は、ちょっとしたアレンジの参考になります。
ラグタイムは、クラシック風に楽譜どおりに弾いてよいのですが、
それに自分流のアレンジを加えた演奏も「あり」です。
そういう点から、参考になります。
また、この映画の音楽監督Marvin Hamlisch作曲の
The Groove, Hookers`s Hooker, Lutherの3曲が入っているのも特徴です。
ジョプリン曲の編曲は誰がしているのだろうと思ったのですが、目次にだけ記載がありました。Marvin Hamlischではなくて、
Gunther Schuller (かつてNew England Conservatory Ragtime Ensembleの指揮者として、70年代のラグタイム・リバイバルに貢献)とのことでした。
 

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コメント

こんばんは

うちの小3になる娘がバレエを習っていまして、先日、先生から練習用ピアノソロ曲数十曲をもらってきたのですが、聴いてみると大方クラシックの曲が占める中、何故か "Solace" が混じっていまして。。。(この曲のタイトルが Solace ということは、このブログを見るまで知らなかったんですが。。。)

「ああ、やっぱりスティングの曲はいいなあ、これなら僕にも弾けるなあ」と思い書店で捜し求めたものの、よくありがちな「あなたにも弾けるスクリーンミュージック」のような曲集には、Entertainerは載っているものの、Solaceが載っているものは皆無でして、「一体この曲は何というタイトルで、どこに売っているのだろう」といろいろ検索してみた結果、ラゲディ・アンさんのブログにたどり着いたという次第です。

昨日、図書館のビデオを借りて久しぶりにスティングを観たのですが、これほど音楽の記憶に支配されている映画って他にないですよね。おっしゃるとおり、1930年代の物語なのだからジャズでも良かったんでしょうけど、今となってはラグタイム以外のスティングなんて考えられないですものね。

ご紹介の楽譜は早速Amazonで注文させていただきました。

投稿: viento-viento | 2007/09/04 01時45分

viento-viento様
娘さんのバレエの曲にソラースが入っていたのですね。バレエは不案内ですが、ラグタイム曲がよく使われるとは聞いています。でもtwo-stepではなくて、ソラースのようなハバネラ曲もレッスンに使われるのですね!
楽譜情報がお役に立ててよかったです。ソラース、よい曲ですよね。ぜひ弾かれてください。私も何年も弾いていますが飽きることはありません。
実は、スコット・ジョプリンなどの楽譜が無料でダウンロードできるサイトを見つけました。近日中にブログで紹介しますので、ぜひそちらも参考にしてください。20世紀初頭、出版されたままの形の楽譜です。

投稿: ラゲディ・アン | 2007/09/07 09時44分

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