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X.L.Rag(1903)とLee Edgar Settleについて

ラグタイムのなかでも、
弾かれることの少ない曲です。
JRCオムニバスCDVol.2「The Favorite」 (2007年1月発売)に素晴らしい演奏があり、この曲の魅力を知りました。
そこで、ちょっと調べてみたのですが……。

作曲は1903年。Lee Edgar Settleの作。
献辞には、「ミズーリ州New Franklinの X.L.Clubに捧げる」とあります。

あまり知られていない作曲家ですが、
「That American Rag」(Schirmer Books, 2000)などに記載があります。
近隣の人には、"Jelly"の愛称で親しまれていたとか。
またこの本によると、ホワイトハウスでも演奏されたことのある、
有名なミズーリ州の州歌「The Missouri Waltz」(1914)は、
実はこのSettleの作曲でした。
「The Graveyard Walts」として弾いてましたが本人に出版のつもりはなく、
結局他の作曲家(Logan and Eppel)の名で、後年出版されました。
Settleが劇場で弾いていたこの曲を、
Eppelが自分のシャツの袖に書き留めたというエピソードが伝えられいます。
なんとも、こそこそと「盗難」したものです。
なお「州歌」になったのは、奇しくもSettleの没年でした。
http://www.missouri-japan.org/outline-j.html

また、ネット上で彼に関する記事を見つけました。
3ページに渡っていますが、写真もあり、
親族や同時代人へのインタビューを掲載している貴重な資料でした。
(「The Ragtime Ephemeralist」("The Graveyard Waltz" by Mr. Galen Wilkes)
http://home.earthlink.net/~ephemeralist/settle01.html

これを読むと、ミズーリ州の田舎で、
このフォーク・ラグが生まれた背景が伝わってきます。

簡単に紹介すると……。
Lee Edgar Settle(1882~1949)は、
ミズーリ州ハワード郡にあるニュー・フランクリンという田舎町の出身。
父親は町の名士で、
郵便局長、地元紙の編集出版、郡の裁判官などを歴任するかたわら、
歌を歌い、ギターを弾いて、それが町の若者たちに人気だったそうです。
信仰の篤い一家は日曜ごとに教会に通っていましたが、
彼が4~5歳のころ、教会から帰って、
耳で聞いばかりのメロディーをピアノで弾いて、
周囲を驚かせたそうです。

音楽の才能を生かすすべは両親にも町にもありませんでしたが、
とあるツアーグループが町に来て彼の演奏に驚き、両親に交渉します。
そのとき、Lee Edgar Settleは、16歳か17歳の高校生。
結局、ツアーグループに加わることが許されるのですが、
Settle家のようなお堅い家庭が、これほど若い子どもを、
このような形で町の外に出すことは、
当時では考えられなかったそうです。

Settleは、一夜のイベントから数年にわたるショーまで、
あらゆる演奏をしたといいます。
そのジャンルは、即製バンド、カントリーグループ、ソロ、ダンス、無声映画などなど。
New Franklinの人々は、彼が町に帰ってきてプレイする日を、
楽しみにしていたといいます。

歴史に埋もれた作曲家、
それが、このLee Edgar "Jelly" Settleのようですが、
楽譜が残っているということは強みです。
100年後の今、その魅力を再現できるわけです。
今、入手できる演奏としては、上記の演奏以外に2つあります。
●「The Roots of Ragtime」(Richard Zimmerman, 1994)
●「Folk Ragtime:1899-1914」(David Thomas Roberts, 1997)

また楽譜は、この曲集に収録されています。
「Ragtime Rarities」(Dover Pubulications, 1975)

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コメント

素晴らしい内容ですね X.Lについては詳細わかりませんでしたが興味深い話ばかりですね この曲は弾く人で違ったニュアンスになり面白いです

投稿: sugou | 2007/04/09 23時04分

X.L.ラグ、今では弾かれることが少ないのに、
こんなに弾く人によって違う曲というのも、面白いですね。
ということは、同じ人でも違う弾き方ができるわけですよ。
今と違う弾き方を課題にしたら、面白いですね。

投稿: ラゲディ・アン | 2007/04/10 20時27分

こんにちは。通りがかりのものです。
「X.L.RAG」は思い出の曲です。昔リコーダー・アンサンブル用に編曲して演奏したことがあります。
リコーダーの出し物で、ラグタイムを一曲入れたいと思い、「Ragtime Rarities」の中でとくに気に入ったこの曲を選びました。
もう10年くらい前のことで懐かしく思い出しました。

投稿: totohiro | 2007/04/10 23時54分

totohiroさん、初めまして。
書き込み、ありがとうございます!
ラグタイムの楽譜の中でも「Ragtime Rarities」を持っておいでということ自体、たいへん通じていらっしゃる方とご推察します。
しかも、あの中からX.L.Ragを選ばれるとは!
ひょっとして、あの曲がリコーダー・アンサンブルで演奏されたというのは、史上初だったのではないでしょうか!?
びっくりしました。
どうぞ、またよろしくお願いします。

投稿: ラゲディ・アン | 2007/04/11 12時22分

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