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ラグタイム音楽の分類

ラグタイム音楽とは、狭義には19世紀末から1910年代後半にかけての約20年間、アメリカで流行したシンコペーション音楽のことを指します。とくに、1899年に楽譜が発売され大ヒットした「メープル・リーフ・ラグ」のスコット・ジョプリン、それにジョセフ・F.ラム、ジェームス・スコットを加えた「御三家」に代表される作曲スタイルは、「クラシック・ラグ」とも呼ばれ、「これぞラグタイム」という名曲の数々があります。映画「スティング」で一躍有名になったスコット・ジョプリンの「エンターテイナー」や「パイナップル・ラグ」、「イージー・ウィナーズ」、「ソラース」などもありますが、そのほかにも一般にはあまり演奏されない名曲・佳曲があります。多くはピアノ楽譜の形で残されていて、過去のよい曲を探すピアノ弾きにとっては、ある意味、宝の山です。

ところが、ラグタイムを弾いたり、楽譜を集めたり、CDを聞いたり、ラグタイム関係の方たちと交流するようになって、「それ以外のラグタイム」の数々にも触れるようになりました。フォーク・ラグ、ノベルティー・ラグ、ストライド、ホンキートンク、ジャズで演奏されるラグ……、このような「ラグタイム音楽の分類」について、私の知識は日本ラグタイムクラブ(JRC)のサイトにある解説から得たものが基本となっていました。

しかし、5月29日の記事で紹介したDavid A. Jasen著の「ラグタイム百科事典」では、これについて、わかりやすい分類を示しています。ラグタイム音楽研究における、最も新しい分類といってよいかと思います。

まず、「クラシック・ラグ」の前段階として、「Early ragtime(1897~1905) 」という分類を設けています。中西部と南部由来のフォーク・ラグで、 正統的でない形式で、 その土地固有で、かつ地域的な、浮遊する(floating)旋律と変わった(unusual)リズムを持つ」として、 Brun Campbell、Charles Hunter、ジャズでも多く演奏される「12 Street Rag」のEuday L. Bowman、黒人作曲家として初めて出版したラグタイム「Harlem Rag」(1897)のJohn Turpinなどがここに含まれています。

また、「クラシック・ラグ」以降のラグタイムを、「ポピュラー・ラグタイム」、「アドヴァンスト・ラグタイム」、「ノベルティー・ラグタイム」、「ストライド・ラグタイム」の4つに分け、さらに「ジェリー・ロール・モートンのラグタイム」は別に1ジャンルとして独立させています。
「ポピュラー・ラグタイム」は1906~12年にかけて、ニュー・ヨークの音楽街「ティン・パン・アレイ」のポピュラー音楽作曲家たちが、シンプルなシンコペーションのメロディーにラグタイムアプローチを施したもの。
「アドヴァンスト・ラグタイム」は、より豊かなサウンドになったラグタイムで、Eubie Blakeの全作品やLuckey Roberts作品の多くがここに含まれます。他に、Pastime RagNo.1~No.5、Russian Ragなどもここに分類。
また「ストライド・ラグタイム」は、おもにニューヨーク市居住の黒人作曲家によるもので、 James P.Johnson、Fats Wallerによるラグタイム作品がおもなものです。

ラグタイムというと、 「ジャズに影響をあたえたシンコペーション音楽」とか、「アメリカの黒人音楽とヨーロッパのクラシック音楽が結びついて生まれたシンコペーション音楽」というような解説をよく目にしますが、Jasen氏のこの百科や、前著(Davie A, Jasen and Gene Jones”That America Rag―The Story of Ragime from coast to Coast”, Schrmer Books, 2000)をざっと眺めただけでも、そんなに単純でないことがよくわかります。ブラック・ミュージックというだけでなく、中西部、南部などのアメリカの地方音楽という観点からさまざまに分析されています 膨大な数の楽譜や音源を集めて分類・研究しているJasen氏ならではの成果でしょう。地方によって使うキー(調)にも特徴があるそうです。
どちらの本も、ラグタイム音楽の観点から見た、アメリカ音楽のフィールド・ワーク、フォークロア研究の最前線を示した本ともいえるかもしれません。

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コメント

ごぶさたしてます、名古屋の青木です。ボブミルンさんのライブにも行けずじまいで、すっかり音楽から足を洗うような格好になってしまい…まぁ、また折りを見て復活すると思いますが。
色々と書籍関係が活発なようですが、スコット・ジョプリンの和書が発売されたのは購入されましたか?買おうかとも思っているのですが、バーリン氏の著作を読んだ立場からすると「ウムム」という心境もあり…。感想がありましたらお聞かせ下さい!

投稿: ragtimer | 2007/06/09 12時06分

青木さん、お久しぶりです。
スコット・ジョプリンの和書が!!!
今、調べましたが、『スコットジョプリン 真実のラグタイム』でしょうか。びっくりですね。著者はジャーナリストでしょうか。他に熱帯魚の著書があるようです。やはり手にとって読んでみないと……。
ラグタイムへの復活、楽しみにしていますので、またHPなどにご報告ください!

投稿: ラゲディ・アン | 2007/06/09 12時39分

Great work!
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投稿: Fawn | 2007/09/01 20時25分

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