キルト展でラグタイムに出会う(キルトフェス見学記 その4)

P1010003  「小野ふみえコレクション」の中に、額に入った写真の展示が二つ並んでいました。それは赤十字のキルトの写真で、ひとつは1918年のもの、ひとつは1998年のもので、全く同じデザインです。 ターキーレッドと呼ばれる色褪せしない赤い生地と真っ白の二色だけを使い、赤十字マークを囲んだ小さい四角いブロックが80枚縫い合わされています。この小ブロックそれぞれに、お金を寄付した人のサインが色落ちしないペンで書き込まれています。
P1010004_1  1918年当時、アメリカ赤十字社は雑誌広告などで、チャリティーキルトの制作を呼びかけたそうです。第一次大戦後の疲弊した時代、復員兵を助けるためだったそうです。
その中で、展示のものは特別なのものだっとのことで、当時の合衆国大統領や、ヘレン・ケラー、エジソン、チャップリン、シートン、ライト兄弟のひとりなど、有名人のサインが多く残されていました。それをのぞくと、五線譜の一節があるものも! 何の曲だろうとのぞきこみましたが、その横にマーチの王様、ジョン・フィリップ・スーザのサインがありました。

20070122_1726_0002_1  さて、1998年の作品は、なんとフォード、カーター、レーガン、ブッシュ、クリントンの歴代大統領5名のサインもあり、その他エリザベス・テイラーやスピルバーグやビル・ゲイツの名まである豪華なものでした。すべて自筆のはずです。
20070122_1731_0000  左下の部分、ビル・ゲイツのサインの下に五線譜が書かれていたので近寄ってみました。すると、なんとこれは、スコット・ジョプリン「The Entertainer」のさわり部分ではありませんか! 誰が書いたんだろう!? 同じブロックには複数のミュージシャンらしき名があり、ギターの絵つきサインもありましたが、この楽譜と同じ濃さのインクのものは、赤十字をはさんで左上にあるサインしかありません。読むと、Marvin Hamlisch。マーヴィン・ハムリッシュ。どこかで聞いた名だなあと思いつつ、はたと思い当たりました! ラグタイムのリバイバルに貢献して、ラグタイムの名を一躍高らしめた映画『スティング』の音楽監督ではありませんか! 過去のキルトを見ていて、ひょっとしてラグタイム関連のものに出会うことはないかなあという気持ちはいつも抱いているのですが、まさにどんぴしゃり。ちょっと興奮しつつ家路につきました。

P1270376 最終日に撮影し直しました。右下の譜面がエンターテイナーとわかるでしょうか?
Marvin Hamlischのサインは、赤十字をはさんで斜め上。

一番上は、Bill Gatesのサイン。赤い星のシールは、ここのサインがあるよという展示用の印です。ハムリッシュは、誰もが知る有名人というわけではないようで、ノーマークでした。

また、右上のギターの上のサインは、"U. Utah" Phillips という人のものでした。1935年、クリーブランド生まれの労働者にしてフォークシンガー。G.V.G.S.Wという称号(自称)は、Golden Voice of the Great Southwestだそうです。くわしくは、こちらで(1月27日追記)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Utah_Phillips

| | コメント (0) | トラックバック (0)

心に残った作品                  (キルトフェス見学記 その3)

東京国際キルトフェスティバルの感想の続きです。

P1010002_1 「キルトに聞いた物語」のコーナーの一作品。1930~40年頃の作品で、フィードサック(プリント柄の穀物袋)などの生地を大切に、大切にはいで作ったであろう様子が、よく伺えます。ひとつのひし形パターンのために何枚もはいでいるのは、生地が足りないという実用のためだけだったのかもしれませんが、それが手の込んだ複雑な配色となって素敵です。縫い目もそれほど細くなく、よく使われて洗いざらしで、私はこういうものにこそとても親しみを感じます。ピンクの無地をこのようにベースに使ったものは他にもありましたが、いいなあと思いました。

P1010116

これは、今年の「準日本キルト大賞」受賞作品「スカイダイビング」です。スカイダイビングをするさまを、ハワイアンキルトの手法で全面にアップリケしてあります。赤いアップリケ部分は、一枚の布だそうです(つまり、一筆書きというか、全部繋がっている……)。アイディアの斬新さと、ダイビングをする人の姿の面白さ。これは感動しました。

***********************

P1010034 P1010037 これは、着物や襦袢の生地を四角にパッチワークして、それを6本並べて展示した作品でした。一つ一つの柄を見ると、郷愁を感じさせるなつかしいようなものばかり。こんな柄、昔、家にあったな~といういうような……。しかし遠目に見ると、右上から紅葉の枝が垂れている風景のようにも見え、素晴らしいと思いました。開拓時代のアメリカのパッチワークを思うと、着られなくなった着物がタンスに眠っていることの多い日本では、大いに着物の生地を活用すべきなのでしょうね。自分の実家にも「宝の山」があるなあと思った次第。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

アンティークキルトの補修             (キルトフェス見学記 その2)

1月21日の東京国際キルトフェスティバルの記事の続きです。

アンティークキルトをしげしげと見ているうちに、補修のあとに気づきました。トップの生地が破れている部分の上にオーガンディーのような透けて見える布がかぶせてありました。これは、博物館などでも行われるような、古いキルト補修の常道なのでしょうか? 副産物として、中綿にどんなものを使っていたか、よく見ることもできました。

P1010027_4

P1010018_2

これは、豪華なクレイジーキルトのボーダー部分の補修。これにも、同じ生地が使ってありました。

P1010019_2 また、靴下の穴をかがるような、こんな補修もありました。これは、このキルトを使っていた人自身の補修かもしれません。何度も洗濯してそれで擦り切れてしまった部分は、このように当て布を入れ込んで、丁寧にかがって使われていたのでしょう。私も、こういう補修は大好きなので、あまりきれいとはいえないけれど、思わず写真を撮ってしまいました。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

アメリカのアンティーク・キルトを見て             (キルトフェス見学記 その1)

P1010111 東京ドームで開催の「東京国際キルトフェスティバル 2007」に行って来ました。私としては今年の見どころは、何といっても「小野ふみえコレクション~キルトに聞いた物語」。アメリカのアンティークキルト研究家の方のコレクションです。
*小野さんによるギャラリー・トークを拝聴しました。それでわかったことがいくつも。赤字で追記します(1月22日)。

  最初に目に入ったのは、「Broderie Perse ブロードリー・パース」。ペルシャ風の刺繍という意味ですが、輸入ものの高価な英国布から花柄だけを切り取って、安い木綿生地にアップリケした作品です。わずか1~2ミリの茎をきれいにかがってアップリケしてある様子は、本当に見事でした。おそらく、花柄がびっしりプリントされている生地より、このように白い背景に花だけのせたほうがずっと柄が生きます。節約と手間が、高価な花柄をさらに引き立てている作品です。*この花も高価な輸入チンツ生地からのもの。赤や青(瑠璃色)の花は、とりわけ高価だったそうです。また、1つに見えるアップリケが2~3種の柄のコンビネーションだったり、2色印刷の安い柄物も混じっていたり、いろいろな工夫が見られるそうです。

 また、おもに18世紀から19世紀初めにイギリスから輸入された大柄のチンツ生地をボーダー(キルトの周囲を囲む縁取り)に使った作品もふたつ。間近でチンツ生地の色合いを見ることができました(下の写真二つ)。*右下の茶色のボーダーはアメリカ製のチンツだそうで、この茶色は「ドラッグ・カラー」というそうです。

P1010109

P1010110_1  作品を見ていると、使い古されて縁が擦り切れているもの、南北戦争当時の兵士に使われたため血痕の多くついたものなどもありました。すりきれた部分に当て布をして丁寧につくろったものには、何とも愛着を感じました。また、作られてから全く洗っていない新品同様もあり、それを「ミント・コンディション」と呼ぶことを知りました。「mint」はどの語源なのかわかりませんが、アンティークものには以下の分類があるようで、メモしておきます(キルトフェスにこの解説があったわけではありません)。*「ミント」とは、The Mint(アメリカの造幣局)のことで、新品のぴかぴかのコインが、mint conditionの語源だそうです。

mint condition(新品。新品同様)
execellent(多少の使用感はあるが、アンティークものとしては良好)
very good(よく見れば上よりは劣るが、見た目には上と変わらない)
good(上よりは大き目の損傷はあるが、気にならない程度)
medium(損傷はあるが、使用上は問題ない)

 また、フリーメーソンにまつわる作品二つも興味深いものでした。フリーメーソンというとヨーロッパ起源の秘密結社として知られていますが、アメリカでは秘密めいた雰囲気よりもむしろ、慈善団体のイメージがあるという話です。「扇模様のファンキルト」(1933、ペンシルベニア州)は、不況下の人助けのために作られたそうですが、イースタンスター(フリーメーソン会員の妻や姉妹が入会を許される女性の結社)が作ったものだそうです。また、「ディモレーのキルト」は赤白のコントラストが美しいマリナーズコンパス(羅針盤)の作品ですが、ディモレー(DeMorlay)というのはフリーメーソンの少年部会だそうで、この作品の刺繍部分のどれかは、メンバーのシンボルだそうです。どれがそうかはわからないと書いてありましたが、馬や手やカトラリー、ツバメや星型などの記号のどれがそうなのだろうと、見入ってしまいました。謎があるのも、なかなか面白いものです。

P1010104_1P1010105_2

*このコレクションに関しては、フラッシュを使わなければ撮影OKとのことでした。他の展示には撮影禁止のものもありますので、カメラ持参の方は係りの方に聞いてくださいね。会期は1月19~27日です。

*今回の「キルトに聞いた物語」の展示は、約200点のコレクションの中から、32枚が選ばれて展示されているということでした。

*ここで展示されている作品のもっとくわしい解説は、以下の本にあります。カラー写真も美しいハードカバーの本ですが、前者はもう売っていないそうです。
『キルトに聞いた物語』(小野ふみえ著 暮しの手帖社 平成10年)
『花かご揺りかご』(小野ふみえ著 暮しの手帖社 平成10年)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

1930年代のクリブキルトとマザーグース

渋谷東急本店で行われている「キルトフェスティバルTokyo 2006」。
本日、初日に行ってきました(2006年9月7日~13日)。

私が一番興味をもっていたのは、
野原チャック先生のアンティーク・キルト・コレクション。
今回のテーマは「永遠の30年代とクリブキルト」ということで、
1930年代アメリカのキルトと、
同年代のクリブキルト(ベビー用の小さいキルト)が展示されていました。

1930年代のアメリカンキルトの一番の特徴のひとつは、
フィードサック生地を用いた明るい配色です。
フィードサックというのは、穀物や飼料が入った袋で、
当時のアメリカでは飼料会社などがこぞって、
かわいいプリント柄の袋に入れて販売しました。
女性の服一着を作るのに、フィードサック二袋が必要だったとか。
同じ柄を二袋入手するために、会社に予約したりとか、
村で最初に納入トラックが着く農家に出向いたりとか、
農家のおかみさんたちも、いろいろと手を尽くしたという話です。
その端切れは当然、パッチワークキルト用に利用されました。
最初からパッチワーク用に用いられることもあったでしょう。
展示の解説を見たら、なんとパッチワーク用のフィードサックのキットまであったようです。

さて、展示には、そのカラフルなフィードサック生地(当時の穀物袋)を細かく組み合わせた作品の数々がありました。
ひとつひとつのピースが小さくて、
その中の柄や模様が本当に細かくて、
花柄、チェック、ストライプ、抽象模様など、
具象から抽象までさまざま。
なかにはとても斬新でモダンな柄も多いのです。
ストライプや無地も、とても味わいある色合いでした。

見所のある作品ばかりでしたが、
どうしてもひとつをあげるとすれば、
「フィードサックの抽象的クレイジーキルト」(アメリカ、1930年頃)と題した作品。
生地をランダムにざくざく縫い合わせ、
それも黒い糸で上からどんどん重ねていくような縫い付け方。
布の端切れの形も、シンメトリーなものや、名前のつけられる図形はほとんどなし。
ほんとうにアバウトな作品ですが、とても味わいがあります。
解説にも「ヘタウマ」とあって、本当にその通り。
そのユーモアに思わず笑ってしまいましたが、とても素晴らしい作品なのです。

クリブキルトは、チラシに載っていたサーカスのキルトは、
さすがに見事で、目を引きました。
しかし、その近くの「愉快な動物たち」(アメリカ 1930年頃)というクリブキルトを見ると、
ブタ、ヒツジ、ネコなどの動物たちに混ざって、
マザーグース風の人物たちが……。
目を凝らしてよ~く見たら、以下のものがアップリケされていました。

①ろうそくの上を飛び越える少年Jack
②座ってチーズとホエイ(チーズ製造でできる乳清)を食べるLittle Miss Muffetとクモ
③羊飼いの少女Little Bo-Peep
④干し草で居眠りする羊飼いの少年Little Boy Blue
⑤草花に水をやるへそ曲がりのMary(ただし鈴も貝もないので、普通のサン・ボンネット・スーかも?)
⑥風呂おけに乗って海に繰りだす三人男(ラバダブ)

ひとつのキルトの中に、
こんなにたくさんのマザーグースの登場人物を見るのは初めてで、
とても印象に残りました。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

思い出の扉

_p6100002 思い出したときだけ自己流にやっていたパッチワークキルトでしたが、いつか体系的に学習したい思いがありました。そして昨日とうとう、それを実現。これから月に2~3度のペースで、基礎を勉強します。

1992年にアメリカでキルトに出会いました。帰国していろいろ調べて、習うならこのこの先生、と決めた方がいましたが、いろいろな状況でできなかったのです。ところが先日知り合った方がこの教室の出身と知り、それに後押しされるように申し込みました。

昨日は初日。基礎的なことと、エイト・ポイントスターの実習をしました。雨の中出かけて早めに教室に着くと、その「先生」がおいででした。講座はベテランの別の先生なのですが、その「先生」がふら~っと来られて、まるで昔からの知り合いのような感じで、自然体に話しかけてくれました。
「1ミリにこだわるより、もっと大切なことがある」「パッチワーク以外の、素敵なものに触れること」そんな話をしてくれました。自分の感性を磨きましょう、という話です。とても納得しました。私がここに来たのは、技術的なこともあるけれど、そういう感性面での切磋琢磨を求めているからです。この先生なら話がすっと通じるなと感じました。その教室の他の方々の雰囲気も含めて、ここに所属しようと心の底から思いました。

今までのキルト歴を聞かれて、アメリカでの話をしました。「講座に参加したのはどこのお店?」「オハイオ州の田舎の一軒家のキルトショップで、名前はリメンバランシーズ……」なんて話もしました。今朝、「そうだ!」と思いついて、ネット検索してみました。そうしたら、なんと、ありました。「Remembrances」のウェブサイトが!! 14年前はまだインターネットなんて考えられなかった時代です。でも14年経って、その店は姿を変えることなく、オンラインショップまでやっていました。そして、ウェブの記事を読んで、初めて店の成立事情も知りました。私にアップリケを教えてくれたナンシーの名もあったし、店の経営者がシェリルとあって、その名も14年ぶりに思い出しました。店は1850年代の農家を利用したものだそうで、あの場所に移転してきたのは92年だとか。とすると、私は移転早々のお客だったのです。シェリルは若いときは軍の看護師で、結婚してハワイにいたころキルトを始め、オハイオに戻ってからも続けたのですが、キルト用の布地や用品の不足を不便に思い、それが84年に店を始めたきっかけだとか。92年に今の白亜のファーム・ハウスに移転、今では、北オハイオおよびペンシルバニア、ニューヨーク州までのお客をかかえる店となり、02年にはAmerican Patchwork & Quilting Magazineでアメリカのキルトショップのトップ10に選ばれたそうです。

思い出の扉が次々と開かれる思いでした。「Remembrances」という店の名は、「思い出の品々」という意味です。

キルトショップ:Remembrances (店の名をクリックするとリンク先につながります)

| | コメント (2) | トラックバック (1)

パッチワーク「ノアの箱舟」

_p1010002  長年放置していた作品の仕上げを「宣言」するために、ここにアップしてしまいます!

 アメリカのキルトショップで数回の講座に参加したときの作りかけです。講座の名前は「Noa's Arc」。クリスマス前になると、この「ノアの箱舟」モノは、いろいろな生活場面で見られました。本屋にもこのタイトルの絵本が並びます。やはりキリスト教的なものをクリスマスに向けて飾るということでしょうね。

 さて、この作品、ほとんどがアップリケでした。このアバウトなラインの動物たちも、子どもの絵ではなくて、型紙を忠実にトレースしたもの。生地はあらかじめキットになっていましたが、こういう色合いはカントリー・カラーというのだそうです。何を隠そう、その店に並ぶカントリー・カラーの生地の数々は、一般の手芸店にはなかなかないもので、それに引き寄せられる蛾のように、私はこの店に通いました。でも講座に参加した数名のうち、一人の女性は、全く自分の好みで生地選びをしていました。派手な原色の紫や黄色やピンク……。アンディ・ウォーホールばりの現代アートのようで、それはそれでとっても魅力的でした。

 アップリケを手でするというのは、私にはとても楽しい作業でした。縫い目を織り込みながら、適当にかがっていくのです。でも大方のアメリカ女性はこれが苦手らしく、パッチワーク好きが集まっているはずのこの講座でも、
「これが面倒なのよね~」
「そうそう、三角のとこはミシンでが~っとできるんだけど、これだけはねえ」
「あら、あんた! そういうの、ずいぶん得意ねえ。日本人って、やっぱり器用ねえ……」
という具合。

 私にはその「三角のとこ」がと~っても面倒でした。全部手で縫いましたが、家にミシンがなかったからではなくて(実際、なかったのですが)、私には手のほうが楽で、楽しいからでした。

 しかし、難関はその先にありました。キルティングです! これがなんと面倒なことか! 人によってはキルティングをミシンでしますが、ここまで「手作業」だけで来たので、キルティングも是非手でやりたいと思いました。でも、きれいな縫い目に揃えるのは、とってもむずかしいのです。帰国して、日常の忙しさにかまけてそのまま放置していました。それから十余年。最近出してきました。もう、あとちょっと。人間も昔より丸くなって(?)、何事にも完全さを求めるだけが能じゃない、と思えるようになりました。そう、だからキルティングの針の目が大きくたって、不揃いだって、とにかく仕上げてしまおう!

 完成したら、またアップします。私の宿題。乞うご期待。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

ポジャギ(褓子器)展

 ポジャギ展に行きました。ポジャギというのは韓国のパッチワークです。名前は知っていたのですが、近くで見たのは初めて。新鮮な感動を覚えました。

 会場のウィンドウにレースのように揺れる薄い生地――それが麻のポジャギでした。よく見ると薄い生地を四角にはいであり、それが幾何学模様になっています。欧米系パッチワークキルトと違うのは、薄い一枚の作品であること。中綿が入らないから、綿を押さえるためのキルティングもなし。そのかわり、表も裏もないので、つなぎ方に特徴があります。縫い代が表にも裏にも出ないように、布の端と端がかみ合うように重ね、両側から手でかがるのだそうです。それもとても細かい縫い目で! 手のかかった、丈夫な作りです。色も白だけでなく、青やピンクや茶など、どれもパステル系のアースカラーで、現代アートとしての可能性を感じました。
 これら、麻のポジャギを見ているうちに、とてもなつかしいような気持ちにおそわれました。何故だろう? そうだ、と思い当たったのは、スワトウ(汕頭)のハンカチやテーブルクロスでした。子どものときから、いかにも「上等なもの」という感じで家にあった優雅な品々。あのスワトウに、この手法が使われていたのかもしれません。

 ポジャギには絹の作品もあります。絹の作品は裏地つきでしたが、やはり中綿は入りません。布のはぎ方もやはり巻きかがりで、縫い代を折った上で上からかがるのだそうです。伝統的な原色の色合わせは五色だそうで、赤青白黒黄。東洋伝統の五行の色です。しかし今のインテリアにもマッチする、落ち着いた色合いや、パステルカラーの組み合わせもたくさんありました。しかも生地が光沢のある美しい絹地で、「絹のある生活」から疎遠になっている身としては、とても新鮮に感じました。

 ポジャギは褓子器と書くそうで、「覆うもの、上からかけるもの」という意味が本来だそうです。なるほどね~。韓国語も、漢字で書かれているととてもイメージがわいて覚えやすくなります。

 たまたまこの日の昼ごはん、ベトナム料理を食べました。フォンという麺料理。これも漢字表記があるのかしら? だって韓国も、日本も、ベトナムも、伝統的には中国文化圏ですものね。それとは関係ないけれど、パパイアとニンジンのサラダは、子どもの頃のお正月料理に必ずあった「大根なます」と、見かけも味もそっくりでした……。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

日本キルト大賞

__p1010203  東京国際キルトフェスティバル報告第2弾。会場はとにかく女性、女性、女性……。自分もそうだけど、いやになるほどの女性軍団(想像つきますよねっ!)。でも、それだけ関心が高いということ。実際に針と布に親しんでいる女性が多いということでしょう。パッチワークキルトは、とにかく手間も暇もかかり、一昔前はよほどの暇のある人でないとできないものというイメージがありましたが、今はそれよりも「アート」といってよいものが断然増えて主流になってきました。芸術活動に時間がかかるのを、人は暇つぶしだとは言わない! すばらしい作品に接しているうちに、人が多いのも気にならなくなりました。

__p1010187 さて、第5回日本キルト大賞の作品の全体像は、公式ホームページで見られます。このコーナーの撮影は許可されていたのでいろいろ撮りましたが、ここではアップ画像のみ使って感想を。今年のキルト大賞は「マスカレード(仮面舞踏会)」。「オペラ座の怪人」に触発されたものだそうで、手前の薔薇は観客と舞台を隔てる存在だとか。着想もデザインぴか一でした。

__p1010193 また、準大賞は「上海ルージュ」。さまざまな配色の赤い布地の組み合わせの妙は見事です。しかも伝統のパターンからクレイジー風の継ぎ方まで、さまざまなパッチワークが駆使されていて、単一なようでいて見ていて飽きることがありません。

__p1010201 そして、とても楽しいのが、「フレンドシップ賞」のカエルや魚たち。生き物たちがアップリケされているのですが、その表情の「間の抜け方(?)」が実にユーモアに満ちていて、楽しめました。

この中で、仮にどれか一枚もらえるとしたら何を選ぶか? 「マスカレード」は所有したい作品ですが、でも「上海ルージュ」は壁掛けに終わらず実用品になり、一生飽きず、使えば使うほど味わいのあるものになりそう。よって私は「上海ルージュ」を選びます、きっと。

キルト作品も音楽も通じるものがあるのですが、かっちりしたものにはそれなりの格式と良さがあるのですが、私は、ちょっとはずしたもの、ちょっとずれたものに、何ともいえない味わいを感じるのです。写真には撮れませんでしたが、岡野栄子さんのキルトは、はずれた味わいが絶品なのです。そして、ラグタイムも、ちょっとはずれたもの、ずれたものなんですよね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

東京国際キルトフェスティバル2006

 毎年この時期、東京ドームに2度も3度も通ってしまいます。東京国際キルトフェスティバル。普段は日常に埋没している不肖ラゲディ・アンの手芸の血が、むずむずとよみがえってくるイベントです。おもに注目しているのは、欧米(おもにアメリカ)のアンティークキルトの展示と、日本のキルト作家の新作品。それにキルト大賞にどんなものが選ばれるか。それから、手芸ショップのブースをのぞいて、端切れや掘り出し物を物色するのも楽しみです。

 今年は、まず「英国キルトの至宝」コーナーのクレイジー・キルトに目を引き寄せられました。ベルベットや絹をランダムにはぎ合わせてそこに気の利いた刺繍を入れてあるタイプで、それ自体はそれほど珍しいものではありません。でも今の私の波長にびびっとくるものがありました。それはチョウやトリ、野の花々のさりげない刺繍です。この一年、昆虫採集やバードウォッチングに付き合った時間が長く、実物をよく目にしていたので、作品のすばらしさが身に沁みました。単純な中にも特徴をよくとらえ、斬新な配色でステッチされている数々の自然界のモチーフ。わあ、私もステッチしてみたい……。むくむくと手芸の虫がうずいてきてしまいました。
 次に探したのは、岡野栄子さんの作品。数年前、食べ物をモチーフした、何ともセンスのよい「おいしそうなキルト」を見て以来、注目している作家です。ありました、ありました。今年はなんと「おめで鯛」キルトが! 和の布を使って鯛をアップリケしているのですが、微妙な鯛の配色やウロコの部分が、柄の組み合わせで巧みに表現されていて、この先生の直感的なセンスのよさを本当に堪能できます。そのほかにも小品・大作取り混ぜて「岡野栄子コーナー」ができていましたが、何と言っても「鯛」が出色でした。
heartornament  もうひとつ、全く予期していなかったもので圧倒されたのが、田川啓二のビーズ&刺繍作品。こんなゴージャスな世界があったのかと驚くような、現実を超越したすばらしいオート・クチュール作品の数々。そういえば、スター・ウォーズのアミダラ(パドメ)の衣装にも、こういう装飾を施した感じのものがあったように思います。まさに現代に生きる過去の遺産、でしょうか。記念に、ショップでビーズのハート型オーナメントを求めてしまいました。今年以降のクリスマスツリー用と思ったのですが、真似すれば自分にも似たものは作れそうです(オート・クチュールは無縁でもね)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)