1930年代のクリブキルトとマザーグース

渋谷東急本店で行われている「キルトフェスティバルTokyo 2006」。
本日、初日に行ってきました(2006年9月7日~13日)。

私が一番興味をもっていたのは、
野原チャック先生のアンティーク・キルト・コレクション。
今回のテーマは「永遠の30年代とクリブキルト」ということで、
1930年代アメリカのキルトと、
同年代のクリブキルト(ベビー用の小さいキルト)が展示されていました。

1930年代のアメリカンキルトの一番の特徴のひとつは、
フィードサック生地を用いた明るい配色です。
フィードサックというのは、穀物や飼料が入った袋で、
当時のアメリカでは飼料会社などがこぞって、
かわいいプリント柄の袋に入れて販売しました。
女性の服一着を作るのに、フィードサック二袋が必要だったとか。
同じ柄を二袋入手するために、会社に予約したりとか、
村で最初に納入トラックが着く農家に出向いたりとか、
農家のおかみさんたちも、いろいろと手を尽くしたという話です。
その端切れは当然、パッチワークキルト用に利用されました。
最初からパッチワーク用に用いられることもあったでしょう。
展示の解説を見たら、なんとパッチワーク用のフィードサックのキットまであったようです。

さて、展示には、そのカラフルなフィードサック生地(当時の穀物袋)を細かく組み合わせた作品の数々がありました。
ひとつひとつのピースが小さくて、
その中の柄や模様が本当に細かくて、
花柄、チェック、ストライプ、抽象模様など、
具象から抽象までさまざま。
なかにはとても斬新でモダンな柄も多いのです。
ストライプや無地も、とても味わいある色合いでした。

見所のある作品ばかりでしたが、
どうしてもひとつをあげるとすれば、
「フィードサックの抽象的クレイジーキルト」(アメリカ、1930年頃)と題した作品。
生地をランダムにざくざく縫い合わせ、
それも黒い糸で上からどんどん重ねていくような縫い付け方。
布の端切れの形も、シンメトリーなものや、名前のつけられる図形はほとんどなし。
ほんとうにアバウトな作品ですが、とても味わいがあります。
解説にも「ヘタウマ」とあって、本当にその通り。
そのユーモアに思わず笑ってしまいましたが、とても素晴らしい作品なのです。

クリブキルトは、チラシに載っていたサーカスのキルトは、
さすがに見事で、目を引きました。
しかし、その近くの「愉快な動物たち」(アメリカ 1930年頃)というクリブキルトを見ると、
ブタ、ヒツジ、ネコなどの動物たちに混ざって、
マザーグース風の人物たちが……。
目を凝らしてよ~く見たら、以下のものがアップリケされていました。

①ろうそくの上を飛び越える少年Jack
②座ってチーズとホエイ(チーズ製造でできる乳清)を食べるLittle Miss Muffetとクモ
③羊飼いの少女Little Bo-Peep
④干し草で居眠りする羊飼いの少年Little Boy Blue
⑤草花に水をやるへそ曲がりのMary(ただし鈴も貝もないので、普通のサン・ボンネット・スーかも?)
⑥風呂おけに乗って海に繰りだす三人男(ラバダブ)

ひとつのキルトの中に、
こんなにたくさんのマザーグースの登場人物を見るのは初めてで、
とても印象に残りました。

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もうひとつのノベルティー・ラグ                   ”Humpty Dumpty”(1921)           ―ラグタイムの中のマザーグースその2

マザーグースの有名なキャラクターである「ハンプティ・ダンプティ」をタイトルにしたラグタイム曲が、もうひとつありました。チャーリー・ストレートの”Humpty Dumpty Rag”の音源をさがしているときに発見。聴いてみましたが、実に楽しい曲で、正直、驚きました。

題名は”Humpty Dumpty”。1921年の作品で、作曲者はHarry Von Tilzer(1982~1946)です。音楽は、豊かでピアニスティックな装飾に満ちた、ノベルティー・ラグのサウンドでした。1914年のHumpty Dumpty Ragと並んで聴くことができます。
http://www.trachtman.org/rollscans/RollListing.php?showpage=8&sortby=title

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Humpty Dumpty Rag(1914)             ―ラグタイムの中のマザーグースその1

_humpty_dumpty_ragfull 何でもありのラグタイム曲のタイトルですが、マザーグースがテーマのものは、意外に少ないような気がします。
そんな中で、これは異色。マザーグース絵本によく描かれているような、塀に座るハンプティ・ダンプティの絵が表紙です。背後の山の上に見えるのは、王様のお城でしょう。

作曲者はCharley Straight(1881~1940)。シカゴ生まれ・シカゴ育ちのピアニストで、オーケストラのリーダーもしていました。この曲は33歳のときの作品です。出版社はニューヨークのM. Witmark & Sons。表紙デザインは、André DeTakacsで、左下にサインがあります。

タイトルに「The Great Fox Trot ―Humpty Dumpty ―Novelty Rag」とあるように、ノベルティ・ラグとあり、曲はフォックス・トロットです。まだ曲を弾いてみていないので全容は書けませんが、ニ短調で始まり、符点音符の羅列という感じの楽譜です。ハンプティ・ダンプティというと、欧米人の頭の中には必ず、その悲惨で(?)滑稽な運命のイメージがあります。やはりそれを暗示したような出だしですが……。

ハンプティ・ダンプティは、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』にも出でくるのでよく知られていますが、マザーグース(英米童謡)では「謎かけ」の詩でもあります。

Humpty Dumpty sat on a wall
Humpty Dumpty had a great fall
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty toghether  again

というのが歌詞ですが、このあとに「私は誰でしょう?」と書いてある絵本もあります。
答えは「たまご」。つまり、塀から落ちた卵は、王様の軍隊をもってしても元には戻せない、というわけです。塀の下に割れた卵が書いてある、ちょっとグロテスクな絵本まであります。

歌詞を書いていて気づきましたが、
”The Great Fox Trot”というサブタイトルは、
2行目のGreatというコトバを意識したものでしょうね。

楽譜や表紙を直接見たい方はこちらへ。http://webapp1.dlib.indiana.edu/sheetmusic/starr.do?c=01&p=2&id=LL-SSM-ADD2834&s=screen

また、MIDI音源はこちら。この曲が聴けます。(8月21日追加)
http://www.trachtman.org/rollscans/RollListing.php?showpage=8&sortby=title

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