デヴィッド・トーマス・ロバーツ 日暮里公演       2006年11月2日

_pb020192_1   東京・日暮里のサニーホール・コンサートサロン。ここが、デヴィッド・トーマス・ロバーツさんの首都圏最後の公演の会場でした。首都圏で3回公演があったので、プログラムはそれぞれ、ちょっとずつ違います。この日の目玉にひとつは、2005年に作曲された未発表曲の「アダムズ・ラグ」。この曲にはちょっと悲しいエピソードがあり、事故で亡くなった3歳の男の子を悼んで、その家族がデヴィッドさんに依頼したエレジーだということです。まだ公の場所で演奏されたことも少ないのでしょうか、リハーサル段階から、何回かフレーズを繰り返しておいででした。さらに、この日の演奏会は、15ある曲目すべてが、デヴィッドさん作曲のもの。

_pb020183  この日はさらに、オープニング・アクトに「グランパズ・ラグタイム・デュオ」が出演します。ロシア人ピアニスト、アレェクスェイ・ルミィヤンツェフ氏と、奥様でヴォーカルの裕美ルミィヤンツェヴァさんの繰り広げるラグタイムの世界。こちらもリハーサル段階から、スタインウェイ・ピアノを気持ちよく鳴らして、開場前の雰囲気はいやが上にも盛り上がりました。

 

 さて、この日のデヴィッド氏の演奏は最高でした。ピアノ全体をふるわすダイナミックな響き、一転してやわらかでふんわりした音色……。その微妙なニュアンスと、まるで色彩があるかのような音楽の流れは、もう絶妙な芸術としかいいようがありません。クラシックだのポピュラーだのというジャンルを越えて、弾き手の心が聞く人の心をふるわせるような演奏でした。デヴィッドさんの心の豊かさや魂のあり方、その全身全霊が、その作曲と演奏にあらわれているのです。音楽のかたちをとったポエジー私にはそう思えました。

 この日は最前列で鑑賞しましたが、繊細な部分ほど、そのときのデヴィッドさんの顔を見ると、ほんとうに険しく、緊張に満ちていました。この極限にまで張り詰めたような緊張から、あのリラックスした妙なる調べが流れてくるのだということを、まざまざと見ることができました。

さて、これが当日の公演曲目です。

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2006年11月2日(金)
David Thomas Roberts Piano Solo公演 
(東京日暮里・サニーホールコンサートサロン) 19:00開演

【演奏曲目】 
ウォータールー・ガールズ Waterloo Girls (1980)
スルー・ザ・ボトムランズ Through the Bottomlands (1980)
パインランズ・メモール Pinelands Memoir (1978)
山の赤ちゃん Babe of the Mountains (1997-1998)
ナンシーの図書室 Nancy's Library (2004-2005)
クリオール Kreole (1978)
トゥールーズ・ストリート Toulouse Street (ピアノ組曲『ニュー・オーリンズ・ストリーツ』より 1981-1985)
ディスカヴァリー Discovery (2004)


(休憩)

アダムス・ラグ Adam's Rag (2005)
マスカタイン Muscatine (1979)
コラール前奏曲 Chorale-Prelude (1989)
コラール第二番 Chorale No. 2 (1990)
デボルジアからトンプソン・フォールズへ DeBorgia to Thompson Falls (2000-2001)
ロベルト・クレメンテ Roberto Clemente (1979)
マリア・アントニータ・ポンズ Maria Antonieta Pons (1986-1987)

<アンコール>

フランクリン・アヴェニュー Franklin Avenue(ピアノ組曲『ニュー・オーリン  ズ・ストリーツ』より 1981-1985)
マディソン・ハイツの女の子 Madison Heights Girl(1979)


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演奏の合間に曲目解説するデヴィッド・トーマス・ロバーツ氏。これが彼のコンサートのスタイル。





<オープニング・アクト>
グランパズ・ラグタイム・デュオ

 ピアノ    アレェクスェイ・ルミィヤンツェフ

 ヴォーカル 裕美・ルミィヤンツェヴァ

キャバレー・ラグ Cabaret Rag by Joseph M. Daly
クオリティ・ラグ Quality Rag by James Scott (ピアノソロ)
12番街のラグ
 12th Street Rag by Euday Bowman (ピアノソロ)
ビリー・ベイリー Bill Bailey(世界初のポピュラーソングとのこと)

ラグタイム・ダンス The Ragtime Dance by Scott Joplin

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公演後に記念撮影。
ラグタイムが縁で今日の顔合わせとなった、日米露3カ国の代表です。

デヴィッドさん、自分は結婚式の仲人みたいだねと、冗談を言っていました。

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デヴィッド・トーマス・ロバーツうらわ公演       2006年11月1日

_pb010113  この日も、良いお天気に恵まれました。

 来日後、東京→名古屋→大阪と、連続3日の公演を終え、京都でオフ日を過ごされたロバーツさん、この日は、うらわでの公演です。
ロバーツさんは、リハーサルのために3時すぎに会場に到着、会館の8階にあるコンサートサロンのカーテンを全部開け、明るいホールでリハーサルを始めてくれました。ヤマハのグランドピアノに向かって指慣らしのあと、スタッフを聴衆に、いろいろな曲を気さくに披露してくれました(写真)。

 この日のプログラムは、10月27日とはちょっと違って、新曲がふたつ。また、他のプログラムでは演奏しない曲目も含まれました。スコット・ジョプリンのGladiolous Ragも。ジョプリンを弾くのは、今回うらわだけですが、この曲はジョプリンの曲のなかでも、メロディーの動きがとても繊細で、ロマン派的作品のプログラムに含むのに、ふさわしい曲目と思いました。

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2006年11月1日(水)
David Thomas Roberts Piano Solo公演 
(さいたま市民会館うらわ) 19:00開演

【Program】 (赤字は新曲)
Pinelands Memoir (1978)
Franklin Avenue (from New Orleans Streets, 1981-1985)
Broad Avenue (from New Orleans Streets, 1981-1985)
Charbonneau (2000), by Scott Kirby
Ice Floes In Eden (1984), by Harold Budd
Babe of the Mountains (1997-1998)
From Iowa to the Colorado Rockies (2006)
Discovery (2004)
Kreole (1978)

(休憩)

Gladiolus Rag (1907), by Scott Joplin
DeBorgia to Thompson Falls (2000-2001)
Chorale-Prelude (1989)
Chorale No. 2 (1990)
Madison Heights Girl (1979)
Nancy's Library (2004-2005)
Roberto Clemente (1979)
Maria Antonieta Pons (1986-1987)

【アンコール曲】
Waterloo Girls

【オープニング・アクト】
浜田隆史さんによるギター・ソロ

Climax Rag      by James Scott
For Teresa (1974)   by David Thomas Roberts
Savoia Rag      by 浜田隆史

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とうとう初日公演                デヴィッド・トーマス・ロバーツ ピアノ・ソロ

_pa270053_2 2006年10月27日(金)。
待ちに待った、デヴィッド・トーマス・ロバーツさんの初公演の日を迎えました。
日比谷・松尾ホールで、 スタインウェイのフル・コンサートピアノを使ってのピアノ・ソロ公演です。

調律が終わったばかりのピアノについたDTRさんを見て、
ホールの調律師の方が、
「ピアノが小さく見えますね」とおっしゃるほどで、
DTRさんが座るとフルコンも威圧感ゼロ。
軽くリハーサルをされて、本番を迎えます。

最初に引き始めたショパンの「前奏曲第一番ハ長調」は、
ショパンのサウンドなのに、何か違う。 クラシックの人が弾かないような不思議な音楽の紡ぎ出し方。 それがまたきらきらと美しく、 これは何だろうと幻惑されているうちに、 2曲目の「パインランズ・メモール」に。
DTRさん風ラグタイムの豊穣なる音とリズムの世界。
そして次の「山の赤ちゃん」は一転、
静かなロマン派風のメロディーは、
涙が出るほど切なく美しく、
こんな音色がどうやって出せるのだろうという美しさでした。
ピアノを弾く姿を見ていると、
まるでカウボーイが馬を軽々と操るようです。
緊張感を感じさせず、
ダイナミックで、しかも繊細な演奏です。

_pa270052 1~2曲弾くと立ち上がって、解説を交えながら演奏してくれます。
もちろん英語ですが、内容はほぼプログラムに書いてあることなので、
事前に目を通しておくと、理解しやすいかもしれません。

夢のようにコンサートの時間は過ぎていき、
最後には2曲もアンコール曲を演奏してくれました。
一日経っても、まだ夢の中にいるようです。
アーティキュレーションの素晴らしさ、
不思議なリズムのとりかた、
あまりに繊細な呼吸法、
ピアノの響きを最大限に生かしたペダル使い、
美しい音色の響かせ方……。

_pa270060_1 DTRさんの演奏を聞いていると、
クラシックもポピュラーも境界はなく、
「そこに音楽がある」という感じです。
とにかくジャンル分けは意味がないような、
クラシックとポピュラーのボーダーがない音楽。
ボーダーレスという言葉がありますが、
これをDTRさんは「シームレス」と言っています。
まさにシームレスなピアノ音楽なのでしょう。

と書きつつも、
まだ私の中で整理がつきません。
でも、DTRさんの「音楽」の弾き方が、
少しだけわかってきたような気がしました。
今日は、この感覚を忘れぬうちにと、
Maria Antonieta Pons や、Introduction、
そして、Roberto Clementeなどを弾いてみました。
また今まで弾いたことのない曲もいくつか。
やはり生演奏を目の前で聞くということは、
最大の「伝染力」を持つと思いました。

今回の来日で初めて持ってきてくれた、
印刷したばかりというピアノ・ピース「For Teresa」。
TeresaというのはDTRさんの奥さんの名です。
作曲は1974年で、テレサさんと結婚したのは2~3年前。
献辞にも「結婚30年前に書かれた曲」とあり、
なんとも不思議なロマンスを想像させてくれます。
この曲も弾いてみましたが、キュートな出だしの、
魅力的な曲でした。

さて来週もあと2回、
首都圏でDTRさんの演奏を聞くことが出来ます。

11月1日(水)さいたま市民会館うらわ 
11月2日(木)東京・日暮里サニーホール、コンサートサロン
http://www.geocities.jp/otarunay/david.html


もっとよく理解できるよう、
それまでに極力、楽譜を読んでみたい私です。

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2006年10月27日(金)
David Thomas Roberts Piano Solo公演 
(東京日比谷・松尾ホール) 19:00開演

【演奏曲目】 (とくに断りがないものは、本人の作曲)
前奏曲第一番 ハ短調 (1839)  フレデリック・ショパン作曲
パインランズ・メモール Pinelands Memoir  (1978)               

山の赤ちゃん Babe of the Mountains  (1997-98)
アイス・フロウズ・イン・エデン Ice Floes in Eden  (1986)  ハロルド・バッド作曲
シャルボノー Charbonneau  (2000)     by Scott Kirby
序曲 Introduction (ピアノ組曲『ニュー・オーリンズ・ストリーツ』
より)  (1981-85)
マガジン・ストリート Magazine Street(同上) (1981-85)
ナンシーの図書室 Nancy's Library  (2004-2005)
クリオール Kreole  (1978)

(休憩)

ディスカバリー Discovery (2003-2004)                     
スルー・ザ・ボトムランズ Through the Bottomlands  (1980)      
ミズーリ連合の思い出 Memories of a Missouri Confederate  (1989) 
コラール前奏曲 Chorale-Prelude  (1989)                   
コラール第二番 Chorale No. 2  (1990)                      
マリア・アントニータ・ポンズ Maria Antonieta Pons  (1986-87)
ロベルト・クレメンテ Roberto Clemente  (1979)   
            

<アンコール>
マディソン・ハイツの女の子 
Madison Heights Girl          
ウォータールー・ガールズ Warterloo Girls         

<オープニング・アクト>
浜田隆史さんのギターソロ
サヴォイア・ラグ Savoia Rag by Takashi Hamada

フォー・テレサ For Teresa (1974) by David Thomas Roberts
忘れません by Takashi Hamada
初めてのキス by Takashi Hamada

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CD「Discovery」              ~西部開拓史に思いを馳せるピアノ曲集

Dtr_2  David Thomas Robertsのピアノ・ソロ最新作。2005年4月リリース。
ラテンやジャズ要素も強い「New Orleans Streets」(1988年)、ラグタイムの真骨頂をみせる「15 Ragtime Compositions」(1993)や「American Landscapes」(1995)に比べて、よりクラシック色が強くなっていると感じました。繊細で、ときに幻想的で、ときにノスタルジック。ショパンやドビュッシーを思わせるような色彩。しかしそんな旋律や和声が、やはり「リズム」に支えられているのは、DTRさんならではでしょう。サブタイトルに「Neo-Romantic and New Eclectic Piano Music」とわざわざ掲げています。訳すと「新ロマン主義・新折衷主義ピアノ音楽」。これだけ見ても、クラシックへの傾倒は感じられます。

 アメリカの歴史が、西部開拓の歴史だった時代がありました。開拓は発見でもあり、Discoveryディスカバリーという言葉に、アメリカ人は特別な思いがあるのではないでしょうか。そういえば、日本人宇宙飛行士野口さんが、2005年に搭乗したスペースシャトルの名も、ディスカバリーでした。

 さて、このアルバムもタイトルが「ディスカバリー」。そして全12曲の冒頭の曲が「ディスカバリー」です。何の「発見」なのかは、CDの解説を読めば書いてありますが、今ひとつ、ピンときませんでした。

_p1010015_1  しかし、「Discovery」の楽譜(左)を見て実感がわきました。
 この写真は、アイダホ州にあるBitterroot Mountains (ビタールート山脈)のLolo Trail(ロロ・トレール)。1805年9月16日、国命を受けた西部探検隊のルイスとクラークがこの近くを通ったのだそうです。
 1803年、時の合衆国大統領トマス・ジェファーソンは、未開拓の西部を、太平洋に向かって水源をたどる旅をこの2人に命じました。その名も、「Meriwether Lewis and William Clark's Corps of Discovery 」。ジェファーソンが期待したのは、マンモスや活火山や塩の山の発見だったというから、時代とロマンを感じさせます。

 2人は、数名の同行者とともに、丸太舟と犬をお供に、イリノイ州を基点に、現在の11州に及ぶ地域を3年間に渡って探険し、動植物、文化、地図などを報告書に書き残しました。マンモスは見つからなかったけれど、地誌的にたいへん貴重な第1級資料を残したことになります。

 このルートは、ミズーリ川をたどっていくもので、ロバーツ氏の地元ミズーリ州では、西部探険隊の歴史のなかでも、たいへん関係が深いものでしょう。地図やくわしい内容は、このナショナル・ジオグラフィックのサイトをどうぞ。二人の肖像もあります(最初の画面表示にやや時間がかかるかも)。
http://www.nationalgeographic.com/lewisandclark/

 CDのこの曲も、探険200周年を記念して、ミズーリ州コロンビア在住の個人が委託して作曲されたもの。ロバーツ氏は個人的な委託作曲をずいぶん受注しているようで、このCDの中にも、いくつも含まれています。

 さて、2曲目の「Charbonneau」は、ロバーツ氏の作品ではなくて、仲間の音楽家であるScott Kirbyの作曲です。この曲も、西部探検隊に関連のあるタイトルなのです。
この曲のタイトル自体はノースダコダ州のゴーストタウンの名だそうですが、その町名は、この探検隊の通訳&案内をつとめたネイティブ・アメリカンの女性サカジャウェアの夫シャルボノーにちなんだものです。サカジャウェアは、1804年当時16歳。なんと1歳の乳飲み子を背負って探検隊に同行したというから驚きます。詳しいことはこちらのサイトで。肖像も見られます。
http://www.nps.gov/archive/jeff/LewisClark2/CorpsOfDiscovery/TheOthers/Civilians/Sacagawea.htm
 

 ほとんど歴史解説になってしまいましたが、このCDには、そんな西部開拓時代の「発見」への思いがこめられているはずです。土地や風景に詩的インスピレーションを受けるというDavid Thomas Robertsさんですから、尚更その思いは強いかもしれません。この中では「ディスカバリー」、「マリアナのワルツ」、「山の赤ちゃん」、「シンシア」の楽譜が手に入りました。ちょっと弾いてみたいのが「山の赤ちゃん」ですが、フラットが6個で、初見で適当に、というわけにはいきません……。

 このCDは、残念ながらCDショップには並んでないと思います。
★アメリカから取り寄せは、こちら。ここに解説もあります。http://cdbaby.com/cd/dtroberts

★解説の日本語訳つきはこちら。「Discovery」冒頭など、3曲ほど一部試聴ができます。
http://www.geocities.jp/otarunay/david.html

★また、今月(2006年10月)末から、David Thomas Robertsさん自身のピアノソロによる、初めての来日公演があります。その情報も、こちらです。
「オタルナイレコード」
http://www.geocities.jp/otarunay/david.html

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ニュー・オーリンズ被害から一周年        ~ニュー・オーリンズの光と闇を表現したピアノ組曲

ハリケーン・カトリーナが米国南部を直撃してから今日でちょうど一周年。ニューオーリンズ市では一千人以上が亡くなり、追悼式典が開かれるそうです(米国時間のリアルタイムでは、これからでしょう)。

あのハリケーン被害で、ニュー・オーリンズの闇が世界に暴かれました。世界で最も進んだ先進国の中で、貧困層がどんな境遇にあり、どんな待遇を受けたか……。一年経って、依然として復旧は進んでいないそうです。

Newoss 奇しくもデヴィッド・トーマス・ロバーツの作品に、ピアノ組曲『ニュー・オーリンズ・ストリーツ』があります。このライナーノートを見ると、この街の醜い部分についての深い憤りが表明されています(とっても難解な言葉で。翻訳の浜田さん、本当にご苦労さまでした)。また、男は侵略者・女は受容者というような古典的な性別概念への嫌悪も、この曲集の発想の大きな原動力になっているようです。

単に、ジェリー・ロール・モートンや初期ニュー・オーリンズ音楽への郷愁として作られたのではなく、作曲された1981~85年当時のこの街の社会的矛盾を、深く感じての作品だったことを、今日初めて知りました。ニュー・オーリーンズの光と闇――これが、このCDにすでに表現されていたのです。

昨年のハリケーン被害を、デヴィッドさんはどのように感じていたことでしょう。最新作CD『ディスカバリー』収録の「フレデリックと湾岸」(1979)という曲は、79年のハリケーン「フレデリック」で被害を受けたカンザスシ・ティに足止めされて、荒廃した様子を目の当たりにした印象から作られたハバネラ作品です。デヴィッドさんに、ニュー・オーリンズへの思いを聞いてみたい気もしますが、きっと英語がむずかしいだろうな~。

今日・明日は、『ニュー・オーリンズ・ストリーツ』の序曲「Introduction」の譜読みをして、ニュー・オーリンズに思いを馳せ、昨年の洪水被害を追悼したいと思います。

この曲、結構弾きやすいです。それにモートン節風のフレーズもいっぱい。モートン大好きの人だったら、絶対わくわくしますから、おすすめですよ!!!

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David Thomas Roberts Piano Solo公演

Dtr いよいよ、デヴィッド・トーマス・ロバーツの来日が迫ってきました。日本初のピアノ・ソロ公演です。ラグタイム・ファンにとっても、ピアノが好きな人にとっても、新しい音楽に興味を持つ人にとっても、発見と感動を与えてくれる公演になるだろうと期待しています。

デヴィッド・トーマス・ロバーツ氏というのは、米国ミズーリ州在住の作曲家&ピアニストです。同時にシュールレアリスティックな画家であり、詩人でもあるというアーティストです。その作曲は、アメリカ伝統音楽のひとつであるラグタイムを基盤に、ラテンアメリカ要素の強い「テラ・ヴェルデ」音楽、クラシックのロマン派の要素、アメリカンカントリー音楽の要素、クラシックの現代ピアノ曲を思わせるものまで、多彩です。でも、理屈は知らなくとも、掛け値なしに、リズミカルで、ときに静謐で、色彩に富んだ素晴らしいピアノ・ソロが堪能できることは確かです。

私は、もう今からわくわくしているのですが、首都圏で行われる三公演のうち、どれに行こうか考えている方のために、それぞれの公演の特徴を書いてみたいと思います。

ロバーツ氏の演奏内容は、基本的にどの公演も同じだということですが、オープニング・アクトの内容などが異なります。また会場には、それぞれ特徴があります。

●10月27日(金) TOKYO スタインウェイサロン 松尾ホール 19時開演 
 
デヴィッド・トーマス・ロバーツ氏、来日してすぐの初日公演です。初めて踏む日本の土地、東京の風景を感じて、また、日本の象徴的存在でもある皇居を目の前にした会場で、どんな演奏をしてくれるでしょうか。
 オープニング・アクトは、公演主催者であるオタルナイ・レコード浜田隆史さんのアコースティック・ギター演奏。ギターでラグタイムをこれだけ弾きこなす方は、日本では珍しいのではないでしょうか。ラグタイムを弾くために(それだけのためではない?)、ギターは独特の変則チューニング。クラシック・ラグだけでなく、デヴィッド・トーマス・ロバーツの曲や、浜田さんオリジナルのラグタイム曲もレパートリーにお持ちなので、何を演奏していただけるのかも楽しみです。
 会場は、スタインウェイピアノを輸入している松尾楽器のショールームに隣接した小ホール。日比谷公園のまん前のマリン・ビル地下という、絶好のロケーションです。地下鉄通路からホール入り口まで連結しています。
 座席数は、ピアノの鍵盤の数の88席。使用ピアノはもちろんスタインウェイのグランドピアノで。楽器商自らのホールで、メンテナンス等は最高でしょう。

●11月1日(水) SAITAMA さいたま市民会館うらわコンサート室 19時開演
 名古屋公演(10月28日)、大阪公演(10月29日)を終えた後、2日間のオフ日で充電したあとのコンサート。東京を感じ、関西の風土を体験した後で、古い宿場町浦和で、デヴィッドさんの演奏に何か変化が現れるでしょうか? 
 オープニング・アクトは、上記と同じ浜田隆史さん。
 会場は、市民会館の7階にある130席ほどのホールです。
 会館までは駅から徒歩5分。浦和で一番立派なホテル「浦和ロイヤルパインズホテル」と向かい合わせで、繁華街のはずれにあります。浦和は江戸時代、中仙道の宿場町として栄えました。会場に向かう途中の町並みは、昔をしのばせるものもあります。老舗のうなぎ屋さんもおすすめだし、上記のホテル一階のビュッフェも、気軽で美味しくて地域の人気スポットです。アクセスは上野からわずか18分、赤羽からは8分です。

●11月2日(木) TOKYO 日暮里サニーホール コンサートサロン 19時開演
 
浦和公演の翌日、荒川区日暮里で、デヴィッド・トーマス・ロバーツ氏、首都圏最後の公演です。このあとは札幌公演後の帰国が迫っています。日本でのツアーにも、名残惜しくなってきた頃でしょう。JR駅沿いに飲食店や薬局やパチンコ屋がこまごまと並ぶ風景は、東京の下町の駅前風景の原点? しかし会場のあるホテルのビルの中だけは、シャンデリアの明かりに照らされた別空間です。
 この日のオープニング・アクトは、ロシア人のラグタイム・ピアニストAlexei Rumiantsev 氏と、奥様でヴォーカルのHiromi Rumiantseva さん。日米露のインターナショナルな顔合わせです。アレェクスェイ氏の弾くラグタイムは、ぴか一。日本在住ではおそらく唯一の、ラグタイム・ピアニストを名乗る演奏家でしょう。またヴォーカルの裕美さんは、この時代のスタイルで、ラグタイムソングを歌ってくれます。ラグタイム研究にも熱心で造詣が深い一面、素敵な衣装でいつも驚かせてくれたりします。ラグタイムソング・シンガーというのも、日本では他にいないでしょう(世界でも珍しい?)。
 日暮里サニーホールはクラシックの演奏会にもよく利用される人気のホールです。併設のコンサートサロンは定員100名のアット・ホームな空間です。ピアノはスタインウェイのコンサートピアノ。スタインウェイは、デヴィッドさんの最も好きなピアノだそうです。
 アクセスは駅から3分で、ホテルラングウッドの4階にあります。

 このほかに、次の公演があります。
●10月29日(日) NAGOYA 名古屋 バラダイスカフェ 19時30分開演
●10月28日(土) OSAKA 大阪 メイシアター小ホール 19時開演
●11月4日(土)  SAPPORO 札幌 ヤマハフィールズ 19時開演

 また、会場では、デヴィット氏の楽譜やCDの販売もあるそうで、それも楽しみです。

★詳細やチケットは、主宰者のオタルナイ・レコードにお問い合わせください。
http://www.geocities.jp/otarunay/david.html

★David Thomas Roberts氏の米国サイトはこちら。
http://www.davidthomasroberts.com/

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Maria Antonieta Ponsの演奏

7月末に、自分のピアノ演奏をスタジオ録音しました。ラグタイムのオムニバスCD参加のための録音です。

音楽教室のサロンを2時間レンタルし、録音装置としてノートPCとEdirol持込み。マイクは教室で設置してくれました。手持ちのマイクよりずっと性能のよいステレオマイクでした。ピアノはヤマハグランドのS6A。弾き手以外は、相当いい環境です。これで、David Thomas RobertsのMaria Antoineta Ponsを7回録音しましたが……。

あ~、やっぱり「集中力ないなあ」というのが実感。全曲で約7~8分という長丁場なので、どうしても途中で意識がとんで、間違ってしまいます。どこかで、ふっと違うことを考えてしまうのです。
というわけで、収穫は「完品ゼロ」。
う~ん、どうしようかな~。

家に帰って、初めて「お試し編集作業」もしてみました。そう、「間違った部分の波形を他のテイクのものと入れ替える」のです。「削除」と「コピペ」でできちゃうんですよね。それなりに面白かったけれど、なんかな~。

スタジオで弾いたとき、自分なりに精神統一(のつもり)をしました。広々としてエアコンがきいて明るい防音ルーム。この曲を聞いてもらいたい亡父や、映像で見たマリアさんも思い浮かべ、ルンバを踊っている姿も想像しました。この「統一」が一番うまくいったのが2テイク目。その後は、回を重ねるごとに演奏が雑になっていったような……。

亡父は、私の演奏は必ず聞きにきてくれました。幼い頃から大人になってのピアノ再開後に至るまで。お茶の水のヴォーリスホールでTake the A trainを弾いた10年前くらいが最後だったかなあ……。いつも「おまえの弾いたのが(出演者中で)一番よかった」と言うのですが、それが気休めやお世辞に聞こえたことは一度もありませんでした。「事実」ではないのですが、父の心の中では「真実」だったのでしょう。いつも、それを素直に嬉しく思いました。

父は戦争中に大学時代を送り、サークル活動の管弦楽でヴァイオリンに熱中していました。大学に憲兵が派遣されていた時代で、「洋楽を演奏するとは、何事か~!」と部室に怒鳴り込んでくることもあったとか。そのときはベートーベンやモーツァルトに切り替え、「同盟国ドイツの音楽であります!」と切り返し、憲兵さんを煙にまいていたそうです。

そんな音楽好きだった父に、ぜひ聞いてもらいたい曲がこれでした。スタジオ録音中、あちらの世界から聞いてくれたかな?? もしそうだったら、きっと「おまえの演奏はとてもよかった」と言ってくれたでしょう。

しかし、よくないんだよな~、演奏が! 

明日は、同じサロンでもう一回「人前演奏」をします。録音はできないけれど、この曲の面白さを感じてくれる人が一人でもいたらいいな~、と思いで演奏します。さてさて、「あ、面白い曲だな」「弾いてみたいな」という人が出てきたら、うれしいな。だって、本当に弾いていて面白い曲なんだもの。

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ピアノ曲「Maria Antonieta Pons」 by David Thomas Roberts

これは、米国人作曲家David Thomas Robertsが1986~87に作曲したタンゴ風の曲。
ホ長調(シャープが4つ)の非常に陽性の明るい曲で、
AABACDという構成で、速いテンポで進んでいきます。
これを、来週の発表会で、ピアノソロで弾きます。

この曲に出会ったのは昨年12月。日本ラグタイムクラブの総会です。
大矢さんご持参のDVDを見て、ビビビっと衝撃が走りました。
ラグタイムとラテンの融合。
いわゆる普通のタンゴのイメージを越え、華やかで躍動感に満ち、
それでいて移り気で、
一瞬のうちに影を帯びたり、コケティッシュにとぼけたりする、
なんとも魅惑的な曲でした。
DTR氏のエネルギッシュな演奏とともに、ただひたすら「すごい!!」と圧倒され、
自分が弾くなどということは、これっぽっちも思いませんでした。

録画は、アメリカのケーブルTVのものらしく、
司会でガイド役のFrank French氏からのインタビューも含めて、
作曲者のDTR氏(と省略します)自らが、
小ぶりのグランドピアノで自作を披露する番組でした。

さて、年が明けてDTR氏のサイトを見たりするうちに、楽譜が買えることを発見。
いてもたってもいられなくて、注文しました。
曲集3冊なので、中に何が収録されているかもわかりませんでした。
そして、到着してみると、
なんと、そのMaria Antonieta Ponsの譜面が含まれていました。
なんだかひたすら長く(14ページ)、
♯も多いし、装飾音も多いし、左手の音はオクターブ以上に飛んでるし、
楽譜を見ての第一印象は、「リストのラ・カンパネラ並み」。
いつか弾けるようになるといいなあと他人事のように思って、
他の曲を練習していました。

そして3月に入り、、6月の発表会が迫りました。
曲目選択を迫られ、
いきなり、「そうだ、一番弾きたい曲をやろう。まだ4ヶ月あるし」と決心。
弾きたいんだから、弾けるのではないか?
数年前弾いたショパンの幻想即興曲だってそうだったんだし……。
そこで、いざ弾き始めました。
そうしたら、見かけよりはず~っと「手が届く」曲でした。
とても弾きやすいのです。ピアノで弾きやすい曲というか……。
「ら・カンパネラ」並みは取り消し!
それが何故かはまだ不明ですが、
ピアノを知りつくしたDTRさんの作曲が、そうなっている?

DTRさんは、愛着を感じた土地や場所からインスピレーションを得て、
よく作曲するそうです。
土地のスピリッツを奏でる吟遊詩人?
しかし、この曲は土地からでなく、人からインスピレーションを得ました。
タイトルの名のキューバ人ダンサーの映像をテレビで見て、
それをもとに作曲されたのだそうです。

Maria Antonieta Ponsってどんな人だろう?
そうしたら、わかりました。
とても有名なダンサーであり、映画出演もしているようです。
キューバ生まれですが、
成人後はその人生のほとんどをメキシコで過ごしたようです。
キューバやメキシコでは、知らぬ人はいない、という人かもしれません。

本日付けの、もう一本の記事でご覧ください。

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ダンサー「Maria Antonieta Pons」(1922~2004)

マリア・アントニエッタ・ポンズは、1922年6月11日、キューバのハバナ生まれ。2004年に82歳で亡くなるまで、60年以上をメキシコに暮らしました。

ハリウッド女優と見まがうほどの美貌と、すばらしくしなやかな体と激しい動き。たぐい稀な天性のダンサーといえそうです。独特のダンススタイルを創造し、それは1950年代まで続いたとか。装飾たっぷりの衣装とそのダンススタイルから「トロピカル・クイーン」と呼ばれた数人のダンサーがいたそうですが、彼女もその一人だそうです。

特筆すべきなのは映画出演。42年からの20年間だけで50本以上の映画に出演しています。彼女の出演により、ルンベーラ(rumbera)というトロピカル・ダンス映画のジャンルが確立されたそうです。

彼女の「ルンバ・クイーン」としての妖艶なダンスシーンがハイライトで見られる映像はこれ。いきなり入浴シーンから始まりますよ~。
http://video.google.com/videoplay?docid=3605817662238888038

腰、胸、足と体の動きを見ていると、やはり天才だと思います。

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ラグタイム―デヴィッド・トーマス・ロバーツの楽譜

_p1010072_1 昨日からの続きです。

能書きはともかく、私はラグタイムの中のラテン要素にとても魅力を感じています。スコット・ジョプリンにSolaceという曲があり、メキシコ風セレナーデという副題があるいように、ハバネラのリズムを持っています。そのため、ラグタイム曲に分類されないこともあります。テラ・ヴェルデもその流れを汲むものだと言えます。ぞくぞくするようなラテンリズム。しかし聞いているとラグタイムにも聞こえます。ソラースも同様です。これはもう、俄然、自分で弾きたくなってしまいます。

 というわけで、David Thomas Robertsの楽譜集を取り寄せました。
「David Thomas Roberts Ragtime Compositions vol.1」(1992)
「David Thomas Roberts Ragtime Compositions vol.2」(1996)
「David Thomas Roberts Ragtime Compositions vol.3」(2000)
それぞれ、8~9曲が収録されています。

 ラグタイム曲の構成というのはだいたい決まっていて、楽曲分析するとABACDのような形で構成され、ABCDそれぞれに繰り返し記号がついて、全部で4ページ、というのが常套的です。ところが、上の楽譜はとにかく分量が多い! 一曲5~6ページから8ページ、中には12ページのものもあります。それは何故か?
 繰り返し記号がないからです。同じA部分でも繰り返しのときは微妙に変化があり、また「ossia」の指示記号とともに、2通りの弾きかたが併記されている部分もあるのです。アドリブ的要素もすべて書かれているというか、完成されている、というべきでしょうか。
 ジャズ・ピアニストや、自分でアレンジをしながら弾く人には面倒な(?)楽譜かもしれませんが、クラシック・ピアノから入る人にとっては、この上なくありがたい楽譜です。 
 だから、譜読みが面倒という印象がある割には、いざ弾いてみると意外に弾きやすかったりします。彼の音楽に魅力を感じた方には、ぜひおすすめです。

 それから「おまけ」で楽しいのが、表紙の絵です。ロバーツ氏は作曲家・ピアニストであると同時に、詩人・絵描きでもあって、そのオリジナルの絵なのです。絵はCDジャケットにも見られますが、どれもシュール・レアリスムな魅力にあふれる絵です。
 第1巻と第3巻の絵は、ゆがんだ家や道が書かれていますが、これを見て個人的には、マザーグースのThere was a crooked manを思い浮かべてしまいました。     

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